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KenConsultingの本多謙が政治/経済記事を独自の視点で評論します

NHKスペシャル「混迷のアメリカ」を評す

2020年6月13日、NHK総合テレビは午後9時からNHKスペシャル番組を放送した。題名は「混迷のアメリカ~コロナ時代 世界で何が起きているのか~」だ。この番組の構成は①黒人男性G.Floydが白人の警察官に押さえつけられて死亡した事件をきっかけに、②大規模な抗議行動が全米に広がり更に世界に拡大している様子を伝え、③それに対するトランプ大統領の力で抑え込む対応が政権内に亀裂を生み、④彼が対抗馬のバイデン氏より劣勢であることを示し、⑤この争乱の歴史的な意味と今後の展開を問いかけた、となっている。

視聴者はこの番組を見終わった後、今後世界はどうなるのか不安になったはずだ。この不安を解消するにはこの番組でいったい何が伝えられなかったかを明らかにする必要がある。なぜならそこにこそ番組制作者の意図があるからだ。

先ず、事件の発端となったG.Floydとはどんな男か?番組では彼は偽札を使おうとしたとしか言っていない。実は彼は押込み強盗、麻薬などで逮捕状が何枚も出ている札付きの犯罪者なのだ。今回は偽札を使い拳銃を振り回しているという通報で駆け付けた警官に拘束されたのだが、実は刑務所を出所した直ぐ後だったのだ。警官はこの大男が逮捕状がいくつもある危険な犯罪者であることが分かったので彼の首根っこを地面に押さえ付けて拘束したという次第だ。相手は銃を持っていたのだから、警官たちは下手をすれば拳銃を奪取されて犯人に打ち殺されるかも知れなかったのだ。事実、アメリカで犯人に打ち殺される警官の悲劇は多い。彼らは命がけなのだ。だから警官がG.Floydを押さえつけたのは納得できる。米国市民はそうした状況を理解した。だからこの事件に関与し逮捕された警官の保釈金として1億円以上の支援金が集まったのだ。NHKはこの背景を伝えなかった。却って、米国の警官は乱暴だというイメージを広める結果となった。

G.Floydは死んで英雄扱いをされ、黒人差別反対デモがアッという間に全米に広まった。彼の親族はデモを控える様主張したがそれは無視され、各地で暴動、略奪、放火が起り警備に当った警官が撃たれて死んだ。そもそもG.Floydは頸部の圧迫が死因ではないという診断がある。彼は麻薬中毒患者であり、新型コロナウイルスの患者でもあった。だがこの殺された黒人の抗議のデモはあっという間に全米に広まった。実にタイミングが良かった。誰かが準備していたみたいだった。番組では、このデモは黒人が主で白人の賛同も多く平和なデモだったが警官たちがそれを暴力で排除したと報じたが、それは事実の一部でしかない。黒人たちのデモは主にBlack lives matter(黒人の命が大事)という数年間活動を続けてきた団体によるものだったが、ANTIFAという国際極左暴力テロ組織も参加していた。実はANTIFAはBlack lives matterを乗っ取ったのだ。ANTIFAは当然銃などを使った。デモ隊の進路の近くに煉瓦、瓶、火力促進剤などを誰かが用意しておいてANITIFAらがそれを使って商店に押入って商品を盗み、破壊し、放火したという報せもある。どこかの団体が暗号を使って交信しデモ隊の暴力行為を計画していたという記録もある。実はテロの現場のビデオで、若いアジア系の男たちが中国語で「走,快走,走走走 (行くぞ!早く!行くぞ行くぞ!)」と言って居るのや、中国大使館員らしい者の群衆扇動についての会話がTwitterに残っている。この一連の騒動は中国共産党がシナリオを書き下部組織を使って実行したと見る者もいる。実はANTIFAは中国共産党の下部組織なのだ。ANTIFAはデモを起こし、人垣を作ってそれを楯にし、自分達の思うように群衆を誘導せよと教えられている。であればこのG.Floydの死に始まった騒動が一気に世界中に広まった理由も理解できる。
米国争乱


放送ではデモ隊が警察権力の制限を訴えていると伝えたが、警察力が弱体化すればANTIFAの活動即ち中国の工作はやり易くなる。事実、ANTIFAらはワシントン州シアトル市内の一区画を占拠して無政府状態にした。民主党の市長がそれを容認している。シアトルの警察署長は「この地域でレイプ、窃盗、全ての種類の暴力行為が起きているが、私たちは中に入ることができない」と嘆いた。NHKはこんな重要な事実も放送しなかった。

放送ではトランプの支持率がバイデンのよりずっと下のまま推移しているのを示し、その理由としてトランプの暴力的な対応が原因だと言った。だが、バイデンが中国の利権にどっぷり漬かり、中国から支援を受けていることには触れていない。放送のなかでF.フクヤマが、今回の黒人解放運動は歴史の転換点になるかも、とコメントしている。放送の文脈からすれば11月の選挙にはバイデンに投票しなければということになる。これはバイデンへの誘導ではないのか?

また、米国の警官が暴力でデモ隊を蹴散らす様子を放送した。これで警察=悪という印象が定着するだろう。しかし、放送は中国が同時期に香港の若者達や子供達に男女を問わず行っている何倍も酷い暴力や拘束などには触れていない。

これらNHKが放送で取り上げなかった事実はインターネットでちょっと調べればすぐ分かることだ。だが「NHKスペシャル」はトランプが米国を混乱させ分裂させている印象を与え、視聴者に不安を残しただけだった。しかもこの放送の翌日には渋谷で黒人差別反対デモがあるのだ。

筆者は、この一連の騒動の裏には中国共産党の戦略が隠されていると見る。その戦略とはどういうものか?中国共産党の立場に立つと多くの事件が整然と説明できる。その仮説をお話ししたい。

中国共産党の最終目標は中国共産党が世界の覇権を握ることだ。その為に中国共産党は毛沢東が1949年に建国宣言をして以来周辺国を併呑し、その地の住民を奴隷にして来た。満州、モンゴル、チベット、ウイグルなどだ。インドやベトナムにも侵攻し、南沙諸島を領土にして来た。国際連合やWHOなどの国際機関を恣意的に動かせる体制を作ってきた。欧州諸国やアジア・アフリカの弱小国も、そして日本もその対象になっている。

問題は米国だ。米国主導の米中貿易戦争で中国が生き残るには、中国は米国を攻略しなければならない。これができれば中国の世界征服は完成し、世界中の人々の生殺与奪を今の中国人民と同様に欲しいままにできる。そこで中国共産党は民主党政権時代に米国の政治家を取り込み、中国に有利な様に働かせて来た。これは一応成功したが、トランプが大統領になり反中国の政策をとったので2020年11月の大統領選挙でトランプを落選させる為の戦略を実施している。

この戦略の基本は、米国との交渉を出来るだけ長引かせ、超限戦を戦うことだ。超限戦は戦闘以外の手段、即ち外交、テロ、マスコミ、法律、企業活動などを通して戦う戦争だ。大きな目標は米国の攻略と香港の自国領化だ。中国は先ず武漢に疫学研究所を作り、そこでウイルス兵器を作り、それを2020年の春節前に湖北省で流行らせた。武漢は交通の要衝であり、春節には中国人が国内国外を大量に移動するのでウイルス兵器の拡散にはベスト・タイミングだからだ。中国共産党にとって10億の農村戸籍の人民は奴隷だからウイルスに感染して死んでも構わないのだ。中国はウイルス情報を秘匿し公表を遅らせ、ウイルスによる被害が世界に拡大する様にした。WHOは買収してあり、ウイルス拡散に協力させた。パンデミック発生前に世界の華人ネットワークを使ってマスクや防護服などの防疫用品を世界中から買い集め、世界がパンデミックに対応でき難い様にし、パンデミック発生後はそれらを高値で売って儲けた。欧州と米国の要人に感染した中国人を接触させ、欧米の政治の指導力を麻痺させようとした。習近平の国賓としての日本訪問もその一部だ。

武漢ウイルスは米国にも蔓延し米国民は長期間家に閉じ込められ、多くが死に、職を失い、不平不満が溜まった。それを一気に爆発させるのに最適なタイミングでG.Floydの死亡を利用した。彼を英雄的犠牲者に祭り上げ、黒人の人権問題という大義名分を使ってBlack life mattersらに争乱を起こさせた。これには中国共産党の下部組織にしておいたANTIFAも利用した。デモではBlack life mattersの黒人や白人たちを使い、それを人垣にしてANTIFAに暴力デモとテロをやらせ、武器と活動資金を与え、破壊活動を指揮した。指揮には中国に留学して米国に帰り地下工作員なった黒人や中国大使館系の工作員を使った。

中国は世界のマスコミを使って①小規模な争乱でも過大に放送させて全米に重大な争乱が起っていると思わせ、ナイーブな白人に贖罪意識を持たせ、社会の変革が不可避だと思う様に仕向け、②暴力で国民を圧迫する低支持率のトランプ対穏健で高支持率なバイデンという図式を視聴者に印象付け、③トランプでは米国を救えず、バイデンが次期大統領として相応しいイメージを植付け、④香港の警官が市民に行っている暴力から目を逸らさせようとしている。

さて、NHKは米国の混迷の裏側を知らないでこの番組を作ったのでしょうか?皆さまはどうお考えになるでしょうか?



参考;
NHKスペシャル 混迷するアメリカ
https://www.youtube.com/watch?v=HGb2yIXkym4
https://www.youtube.com/watch?v=edHDE-KDDiU
https://www.youtube.com/watch?v=mbcIoVei0l4

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グローバリズムの未来

2020年1月以来の新型コロナ禍から世界は徐々に元に戻ろうとしている。日本では安倍首相は5月25日緊急事態を全面解除した。中国武漢から発生した新型コロナウイルスにより5月末時点で世界では600万人が感染し36万人が死亡した。米国では600万人が感染し36万人が死亡した。中国大陸では公式には5千人が死亡したことになっているが、実際は2000万人以上だろうと言われている。西欧世界では都市封鎖が行われ、経済活動が止まり倒産や失業が増えた。

各国の政府はコロナ禍での被害より感染対策による被害の拡大を怖れて経済を再開させつつある。しかし一旦委縮した経済や消費行動はなかなか元に戻らない。例えば航空業界は今後長期低迷が続き、おそらく元の規模には戻らないと見られている。人の移動を前提にした経済行動や消費行動がビデオ会議などで人が移動しないものに変ってしまったからだ。中国は西側諸国がコロナ禍対応に必死な隙を突いて国家安全法を成立させて香港の自治を剥奪し、トランプ大統領はそれを受けて5月30日中国に宣戦布告するに近い演説をした。

他コロナ後の世界がコロナ前からどの様に変わるかについて多くの議論がなされている。最大の焦点は旧来のグローバリズムが崩壊したという点だろう。コロナ前は、グローバリストは自分こそが世界のあるべき姿を実現するリーダーだとみなし、ポピュリストに対抗して自らの正当性を誇示していた。ポピュリストとはグローバリストがナショナリストを「大衆の動きに迎合した者」と侮蔑した呼び方だ。コロナ前のグローバリストがグローバリズムをどの様に認識していたのだろうか?それを解説するコラムが2019年7月26日の日経新聞FINANCIAL TMES欄に載っているので紹介したい。そしてグローバリズムは今後どうあるべきかについて考えてみたい。

このコラムの題名は「健全なグローバル主義が依然、必要な理由で著者はグローバルエコノミストコメンテータのMartin Wolf氏(以下W氏)である。題名から、W氏はこのコラムでポピュリストの攻勢からグローバリストを擁護したいことが分かる。先ず彼は宇宙船から撮影した丸い地球の写真を示し、これから導き出されたグローバリズムの概念を提示する。それは①「この宇宙から撮った美しい青色の球体の地球の写真」を見て「人は皆、互いに密につながっており、複雑な生態系の一部をなす」と思うのであり、②「人に共通することは全ての人間に共通すると」考えるべきであり、③我々は「道徳的にも現実的にも」「我々は地球的視野で物事を考える必要がある」のであり、④それは「経済だけの話ではな」く「人間は皆、グローバルな責任を負い、推進すべき共通の利益がある」のであり、⑤その推進単位「国民国家」が、「これをはるかに超えた」「人間全体として考える必要がある」と言う。
碧の地球

W氏はこの観念を現実のものにする為に「世界的公共財」という指標を提示する。世界各国が協調してグローバリズムが進展するほどこの指標が増えるのだ。W氏によればグローバリズムは、第2次世界大戦の惨禍は各国のエゴが衝突した結果でありその惨禍を繰り返さない為に第2次世界大戦の戦勝国が1944年に作った米国主導のブレトンウッズ体制から始まる。W氏はブレトンウッズ会議後75年間のグローバリズムの成果として「絶対的貧困層の割合が世界人口の10%を切った」ことを挙げ、「経済や社会が複雑になるに従い必要な公共財も」世界規模で「大幅に増え」ていると指摘する。我々が「生物圏を分かち合っている」以上「環境をグローバルに保護すること」、平和、「予測可能で開かれて安定した世界経済」、「経済発展」も公共財だという訳だ。しかし、「グローバルな公共財というのは、各国が協力して初めて実現する」ので「各国が協力を拒めば、公共財を創り出すことはできない。」従ってW氏は世界の繁栄と安定をもたらす世界規模の公共財を供給し維持する必要があり、その為の課題を3つ挙げている。
第1は、民主主義国家の「アイデンティティーと国民」の利益の相反だ。その例としてW氏は「グローバル化を進める上で最も重要な移民問題は、国際的には進めた方がよくても、国内の支持が得られないと」言う。
第2は、「世界における自国の位置づけと、国内問題のバランスをどう取るか」だ。強国と弱小国の間には金融面のグローバル化、貿易、法人課税、環境などで格差や不公平があり、その為に弱小国内に生じる不満を是正しなければならない。
第3は、最も重要な問題として「国内の失政や利害対立を外国人のせいに」して自国内の外国企業や外国を排除しようとする動きだ。
W氏は締め括りとして「世界規模で考え、行動しなくてはなら」ず、「協調的なグローバル主義を守るべき」であり、国民国家が「排外主義に走」らず「地元、国、地域、国際レベルでの要求と懸念のバランスをと」るべきだ、と言う。

W氏のこのコラムは昨年7月に英FTに掲載されたものであり、10か月後の世界の現状は彼のグローバリズムに対する反論に満ちている。そもそもW氏が言うグローバリズムとは何だったのか?それは「人類は漆黒の宇宙に浮かぶ地球という天体に住む孤独な存在」という印象から来るものだ。1970年代のこの1枚の写真は世界中の人間に人類が広大な宇宙でちっぽけな地球にしか住めない生き物であることを“観念ではなく現実として”理解させたという点で世界史的な事件だった。これ以降欧米の政治経済のメッセージには“this planet”という表現が頻出する様になった。それは「世界中どの人も同じ仲間として共に道徳的にも経済的にも豊かに幸せになるべきだし、その様にして行こう」というものだ。

この少し前に、グローバリズムを実現する手段として機能したのが第2次世界大戦直前に発足したブレトンウッズ体制だという。これは第2次世界大戦の惨禍が西欧各国の利己主義が衝突したからだという反省に立ってこの惨禍を繰り返さないように構築しようとしたもので、当然第2次世界大戦の戦勝国、特に米国が主導した。ブレトンウッズ体制は70年代に破綻したが米国はグローバリズムを主導し続けた。日本は戸惑いながらもそれを受入れた。

米中が国交回復し鄧小平が改革開放路線を始めたのも70年代だ。西側は中国に西側の社会、政治、経済システムや科学技術を提供し、中国に投資し、米国市場を中国企業に開放し、中国をWTOに加盟させて中国企業の成長を助けた。それはグローバリズムの定義に従って中国が西側の良き隣人になることを期待したからだ。そのおかげで中国のGDPは日本を抜いて世界第2位にまで成長した。

だが、その過程は結局西側のグローバリストが期待した通りではなかった。鄧小平が70年代に改革開放路線を始めた時彼は自国民に韜光養晦(とうこうようかい)を説いた。これは「今は野心を隠して実力を蓄えよう」という意味だ。この路線に従って中国は米国を凌駕して世界の覇権を握ろうという野心を隠し、米国の忠実な弟分の振りをし、あらゆる方法で西側の先端技術を吸収し続けた。当然賄賂、ハニートラップ、スパイも横行した。彼等はひたすら自己を無にして西側のシステムを学びそのコピーを自国に再現した。そして中国のGDPが日本を超えたころから中国は自国の覇権を表に出し始めた。習近平が中国最高指導者になった頃に出た一帯一路構想やAIIBがそれだ。中国は共産主義世界革命を中国主導で実現しようとしたのだ。このころから米国は中国の覇権主義に対する警戒感を強めて来たが、武漢発のウイルスがパンデミックを起こし600万人の米国人が犠牲になって中国制裁を強化し始めた。

そもそも、中国は19世紀から米国に肉体労働者を送り込んできたし、第2次大戦中は米国の支援を受けて日本軍に対抗したし、戦後は米国の対ソ連冷戦に協力したから、米国にとって中国が敵になることは想像しにくかっただろう。それに鄧小平は中国を14億人の市場として米国に売り込み、米国はそれにすっかり乗ってしまった。米国は中国人を教育して少しづつ豐かにしていって高価格帯の商品も売れる様にしようと金儲けのシナリオ実現に熱中した。米国の製造業を国内から中国に移し、中国の安い人件費を利用して製造した製品を世界中で販売して利益をあげた。これらは米国が、中国人は適切に教育すれば西側の「同じ仲間」になると思い込んだからだ。西洋人の東洋に対するロマンチシズムもあっただろう。

だが、中国人の民族性は数十年間教育した程度では変わらなかった。そもそも教育で変わるものでもなかったのだ。孫氏の子孫たちは「兵は詭計なり」、つまり“戦争の基本は敵を騙すことだ”の言葉通り理想主義の米国人を何年も欺き続けたのだった。中国は「超限戦」を米国に仕掛けたのだ。これは通常戦に加えて外交、国家テロ、諜報、金融、通信網、法律、心理、メディア等を総合的に組み合わせた軍事戦略であり、攻撃された側はそれをSilent Invasion と呼んだ。西側諸国は中国からの賄賂や嘘によって社会規範が甚だしく腐敗したのを改めて認識した。

ところで、米国がブレトンウッズ会議以来推進して来たグローバリズムは第2次世界大戦の戦勝国の論理を世界に押し付けるものだった。米国は製造工場を中国などに移転した為米国内では製造のノウハウと雇用が失われ、中間所得層が激減し、失業者は貧困化した。製造業を受け入れた後進国では労働者が低賃金で過酷な労働環境に甘んじる他無かった。グローバリズムは先進国の投資家だけを富ませる経済競争原理の別名でもあったのだ。

日本人は、中国に対して遣唐使のころの印象を持っている。中国はこの点を日本に訴えた。これに呼応して日本政府は中国からの留学生を受入れ、中国に技術、法制度、経済運営の仕組みを教え、産業界は中国に投資した。これは日本にとって突飛なことではない。日清戦争後に清から多数の留学生を受入れたし、戦前には「五族(和・韓・満・蒙・漢)協和」、戦後には「人類皆兄弟」が普及していた。日本は文化の先進地としての隋唐時代の中国にロマンを抱いて、中国が再び西側先進国の良き隣人になることを願ったのだ。安倍政権は「ヒト、モノ、カネの最も自由に行き来する国」を目指し中国との交流を進めて来た。その結果在日中国人は73万人に、在中国日本人は12万人に増えた。(2018年)

だが、日本人は現在の中国人が隋唐時代の漢人の子孫ではないことを見落としていた。昔の漢人の血は途絶え、今の中国人は周辺諸国からの征服王朝や毛沢東が中国人の文化文明を消滅せしめた後に残った無頼の者たちなのだ。日本も中国の超限戦の対象であり、Silent Invasionは日本にも起こっているのだ。

さて、2020年5月、中国をめぐる国際政治経済の環境はこの数か月で激変した。引金になったのは武漢発の新型コロナウイルスだ。米国が中国を非難する理由は情報隠蔽のせいでパンデミックを起こし600万人の米国人が犠牲になったのでそれを償え、という他にウイグル・チベットでの人権弾圧、数多のスパイ行為、香港に対する一国二制度の否定など沢山ある。米国は中国を米国から分離する他に関連諸国を糾合し中国に巨額の賠償金を支払わせようとしている。米中冷戦構造のなかで中国は確実に孤立しつつある。国際決済、IT技術、食料を押さえられた中国には勝目は無い。近い将来、中国は清朝末期の様になるか、軍閥が割拠する様になるかも知れない。

この状況で日本の安倍政権は習近平の国賓訪問を進めようとしている。これをやれば日本は中国側の国と見做され米国市場を失うかも知れない。リスクはこれだけではない。中国国防動員法が発令されれば日本にいる73万人の中国人は突然便衣兵になって敵対行動を始めるだろうし、中国にいる12万人の日本人は拘束され人質になるだろう。日本の取るべき政策は明らかだ。

ところで、米国は自らが主導してきたグローバリズムを否定しているのだろうか?そうではない。グローバリズムから中国を排除しようとしていると見做すべきだ。「America first」は米国の負担を削減する為のメッセージで、米国は形を変えてグローバリズムを主導し続けるだろう。日本は米国のグローバリズムの文脈に呼応して行動して来た。今後も東洋における重要なパートナーであり続け、中国からの蚕食を防ぎ、自国の国益と友好国の利益を求め続けるべきだ。では具体的にどうすべきか?これについては次のブログで述べてみたい。

資料;https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47782020V20C19A7TCR000/ 
2019年7月17日付 英フィナンシャル・タイムズ紙 https://www.ft.com/

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日経はなぜトランプを貶しバイデンを揚げるのか?

   トランプ氏と「戦時」の資質 F・ルーズベルトとの落差

日経新聞本社コメンテーターの菅野幹雄氏が、トランプ大統領は戦時の資質が無い、とこき下ろしている(2020年4月7日の日経新聞「Deep Insight」欄)。筆者はマスコミがレトリックを駆使して読者を無意識のうちに自分の望む方向に誘導する技術にかねがね感心している。菅野氏のこのコラムを題材にその手法を明らかにしてみたい。

題材は今年11月の米国大統領選挙だ。菅野氏(以下、コラム子という)はトランプ氏に再選して欲しくないと思っているようだ。そこでコラム子はこのコラムを以下のように構成したようだ。

① 新型コロナウイルス禍に対する対応を多々貶し、
② これに対して米国企業の対応を持ち上げ、
③ ルーズベルトが戦時下の米国大統領として如何に素晴らしかったかを強調し、
④ トランプ氏が米国世論の同調を得ていないことを匂わせた。
コラムの後半でコラム子は
⑤ 民主党のバイデン元副大統領がトランプ氏を上回る人気であると述べ、
⑥ クオモ・ニューヨーク州知事候補も忘れてはならないと言い、
⑦ トランプ氏が両者に非協力的だと評し、
⑧ 新型コロナとの「戦争」に勝たなければトランプ氏の再選は危うい、

とコラムを閉じている。
図200407

コラム子は①で2時間以上に亘るトランプ大統領の記者会見を「異端のリーダー」が「根拠なき楽観と自己主張」を繰り返し、「場違いの政敵批判」を行い、彼の欠点が「露見」したと非難している。これは多分に決めつけだ。このタイプのトランプ非難はトランプ氏が大統領候補として有力視され始めたころから民主党側が執拗に繰り返して来たレトリックなので今さら驚かない。何故ならトランプ氏は政界のエスタブリッシュメントではないよそ者だからだ。だが、彼が2時間を超える記者会見をする事自体が国民との対話を重視している証拠だし、2時間の記者会見に耐えられるなんて73歳とは思えない体力だ。これは戦時のリーダーにとって必須だ。それに政治家であれば国民の不安を打ち消す為に自分が達成した経済好況に触れたり国民に勇気を与えるメッセージを与えようとするのは当然だし、それは必要だ。それをコラム子は「根拠なき楽観と自己主張」と独断する。そもそも中国はこの新型コロナウイルスの原産国であるにも係わらず情報を隠蔽し嘘の発表を続けて来た。その為に米国や西欧世界の多くの国は初動対応が遅れた。日本も遅れた。従ってトランプ氏のメッセージが当初は楽観的だったのも仕方のないことだ。トランプ氏のメッセージがより多くの情報を得るに従って厳しいものに変ったのを非難するのは不当だ。非難されるべきは嘘の報告を連ねた中国にある。コラム子はトランプ氏に対する否定的な言辞を並べることで読者にトランプ氏に対する否定的印象を植え付け、間接的に中国を擁護しようとしたのではないか?

更に、コラム子は(②で)トランプ氏が「米医療メーカーの製品を自分の成果のように語った」とトランプ氏の人格を否定した。更にコラム子は米軍や米国企業の柔軟で迅速な対応を褒め上げ、トランプ氏の2月26日の「復活祭(4月12日)までに経済を再開させたい」という発言を「軽口」と決めつけ、「器量に不安のあるリーダーの危機管理を、超大国の英知が辛うじて支えている。」と評した。この評価には誤りがある。大統領は米軍の最高司令官なのだから米軍の迅速な対応は大統領の実績だ。更に、先が見えない国民の不安を減らし安心させるために大統領として「復活祭までに」は何とかしたいと言うのも納得できる。そもそも大統領は事態終息を約束した訳ではない。第一、疫学の専門家だって情報不足の為事態終息を予想できていないのだから。検査機を紹介したって、大統領がそれを作ったものでないことは誰だって分かる。ニュースキャスターだって新製品があれば紹介しているではないか。こういうメッセージを「軽口」と決めつけたり大統領の人格を貶めるコラム子は偏っている。


(③で)コラム子は第2次世界大戦中の炉辺談話で有名なルーズベルト大統領をトランプと比較してトランプを貶めているが、そもそも炉辺談話にはゴーストライターがいた訳で、トランプの様に本人の言葉で語った訳ではない。それに炉辺談話は1回13分程度で、トランプ氏の2時間よりずっと短い。トランプの方が国民との対話にずっと汗を流しているには明らかだ。コラム子はルーズベルトを「真珠湾攻撃の屈辱を経て」と紹介している。これは日本人なら使ってはいけない表現だ。ルーズベルトが日本を真珠湾攻撃に引き摺り込み200万人の日本人が死ぬ戦争に誘導した張本人なことは日本人なら知ってる。

コラム子は「彼の残した言葉のひとつに『嘘を何度繰り返しても真実にはならない』(39年のラジオ演説)がある。事実を曲げ、自分の落ち度を認めないトランプ流は、無数の嘘を繰り返すことで、それが真実のように人々に思わせる手法といえる。とてつもない落差だ。」とトランプ氏が嘘を繰り返していると貶す。だがどれが嘘なのか、コラム子は明らかにしていない。コラム子はトランプ側に否定的な言葉を並べてトランプ氏の印象を悪くしようとしている。それに日本の敵のルーズベルトと比較するのは日本の読者にとって逆効果だ。

(④で)ルーズベルト上げの補強にコラム子は「米世論調査の第一人者であるジョン・ゾグビー氏」のトランプ氏に対する否定的見解を持ち出した。この見解はゾグビー氏個人の見解だが、コラム子のレトリックは米国世論の大勢がトランプ氏に否定的だという印象を読者に抱かせる。これはトリック的ではないか?

コラム子は次に(⑤で)民主党元副大統領で次の民主党大統領候補のバイデン氏を持ち出し、彼が支持率でトランプ氏より優位だとバイデンを揚げ、更にバイデン氏が超党派の協力を求めているのにトランプ氏は冷淡だというイメージを醸成している。(⑦)コラム子は更に(⑥で)クオモ・ニューヨーク州知事の人工呼吸器不足の訴えを挙げ連邦政府(つまりトランプ氏)の対応失敗を印象付けようとしている。

コラム子はコラムの終段(⑧)で、新型コロナとの「戦争」に勝たなければトランプ氏の再選は危うい、とコラムを締め括っている。コラム子は様々な例証を挙げてトランプ氏が大統領に相応しくないと主張した。その対抗馬として挙げているのが民主党のバイデン大統領候補だ。バイデン氏はコロナ禍の為に苦境にあるので、コラムを読み終えた読者の心情はバイデン寄りになっていることだろう。

だが、バイデン氏については、コラム子はあえて触れなかったのだろうが、彼は疑惑満載のクリントン夫妻と同様とても、とても中国寄りなのだ。次期米国大統領はトランプ氏でなければバイデン氏になる。バイデン氏が大統領になれば中国にとって大きな利益になる。コラム子がこの力関係を知らないはずが無い。新型コロナウイルスが武漢発の細菌兵器であることは世界の多くの研究者が指摘しているところであり、世界の主要国が中国に賠償を求める動きが加速している。そんな状況で、バイデン候補に味方するように暗に読者を誘導することがナニを意味するか、日経新聞の幹部であるコラム子よく承知しているに違いない。


資料 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57716130W0A400C2TCR000/

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「監視資本主義」の衝撃

「AI独裁ばらまく中国」と題するブログで筆者は中国発の監視「システムを使えば悪の国家は個人の行動や思想を逐一把握し自分の都合で逮捕し裁判にかけ、場合によっては死刑にすることもできる。」「逆に、善の国家や企業はこのシステムを使って国民の不満や要求を詳細に吸い上げ、それを解決する施策を迅速に打てることになる。 」と述べた。だが、日本や米国のような“善の国家”であっても“AI付きの監視システム”によってその資本主義システムは変容する危険性がある。

John Thornhill氏(英フィナンシャル・タイムズ紙コメンテーター)は「『監視資本主義』の衝撃」というコラムを19/2/14付日経新聞6面に載せている 。彼の論説の監視カメラを多用した監視システムにあるのではなくて、監視カメラからのビデオや映像、その他様々なセンサー、クレジットカード等の購買履歴、インターネットのアクセス履歴等のビッグデータからAIを使ってどの様な情報を引き出すかの論理についてだ。このプロセスには当然“価値観”が関わってくる。“価値観”は“倫理(morals, morality, ethics)”と言い換えても良い。

これは有名な事例だが、ある若い女性の購買履歴を調べたら、この女性は妊娠初期であり、その為の商品を購入する確率が高いと判断され、業者はそのカタログをその女性に送ったことがある。その女性の父親は自分の娘がよもや妊娠する様なことをしているとは夢にも思わずその業者を非難し、娘も同調した。だが、その娘はその後自分が妊娠していたことに気付いたのだった。これは個人のトラブルであってどちらかというと平和な例だが、もし対象者が成年の男性で政治活動をしていたなら、彼に対して次の選挙で特定の党に投票するよう誘導したり、テロを実行しそうなので逮捕したり、特定の商品や思想傾向の本を買う様に誘導したりできる。

Google NWオフィス
グーグルのニューヨークオフィス(出典;ロイター、2019/2/14付日経新聞)

「米グーグル、米フェイスブック、中国のアリババ集団、同騰訊控股(テンセント)などの企業は、消費者を"監視"して様々なデータを収集・分析し、それを"資源"にかつてない規模で効果的に人の行動を先読みすることで稼ぐ、新しい形の資本主義を開きつつある。」とショシャナ・ズボフ氏(米ハーバード・ビジネス・スクール名誉教授)は“監視資本主義”の危険性を指摘している。「IT各社がいかに資本主義のルールを書き換えつつあり、権力構造をも変えつつあるかという指摘だ。」 

これは「今後のカネと権力を誰が握るのかという」闘いでもある。例えば、乗用車を買いそうな見込み客をネットの行動から特定し、自社の製品を購入する様なタイミングでメッセージと購入条件をその見込み客に送ればその商品のメーカーは市場で勝てる。この様な誘導はより多く利用者を獲得し、より多様なサービスをネットで提供する事業者が、より優先的な立場を獲得することになる。一旦その地位を得ればそれを覆すのは困難になる。事実、アマゾンやグーグルに日本人の生活は大きく依存し、行動のスタイルは変化しつつある。

ズボフ氏は「この監視資本主義はやがて『(人間の個々の行動や経験を予測、マネタイズするためだけの材料にしてしまい、個人ではもはやそれにあらがうことができなくなる)インストロメンタリアニズム(instrumentarianism)」という新たな恐るべき権力形態に変貌する危険がある」と言い、「この邪悪な収益化装置」を無力化するには「政府による規制、市場における競争、個々人」がネットの利用方法を工夫する必要がある、と言う。この3点の詳細については長くなるので日経新聞をご覧頂きたい。「資本主義のプログラムを育んでいくためのデータを提供しているのは、結局、我々なのだということを忘れてはならない。」とズボフ氏は論を閉じている。

これらに関して日本でも既に色々議論があるようだ。筆者はこれに関して3点を挙げたい。

第1に、ズボフ氏が「この形態への変化は中国で既に最も目に見える形で始まっている」という様に我々は文明の岐路に立っていることを十分に理解することだ。中国がウイグルやチベットで展開しているAI監視システムがヒトラー以上の人権弾圧や民族浄化を可能にしていることをわれわれは認識すべきだし、こうした中国の非人道的な価値観に対して否定の声をあげるべきだ。

第2に、民間企業は倒産しない為に、収益を上げる為にビッグデータを不当な方法を使ってしまうことがある為に発生する問題に対処しなければならない。ビッグデータをどう使うべきかの議論は日本では個別的で散漫な感じが否めない。企業が収益をあげるためにビッグデータをどう使い、それを官僚が社会システムとして妥当かどうかを個別に判断する程度ではないか?我々はネットに関する倫理をもっと体系的に考える必要があろう。我々はどういう倫理を基礎にした社会を創ろうとするか、宗教者、哲学者を含めた議論をすべきだ。

第3に、これらの議論を通して得られた倫理体系を実現するGAFAのようなデータ産業複合体が育つ環境を政府が整備するよう求めたい。家電などの「ものずくり」産業で繁栄した日本の産業はまだインターネット産業時代に適応していない。例えばスマートスピーカの仕様についてあれこれ批評して喜んでいるのはお寒い限りだ。スマートスピーカの背後にあるネットとサービスとそれを支えるAIが重要であってスマートスピーカなどある程度の性能を満たせばどうでもよいのだ。インターネット産業時代は情報が全てなのだ。米国はそれを理解しGAFAを産業として育て、中国はそれを理解しGAFAの相似形を作った。日本は追い付かなければならない。

資料;https://www.nikkei.com/article/DGXMZO41217590T10C19A2TCR000/

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AI独裁ばらまく中国 拡販される監視システム

中国の監視カメラシステムの危険性を指摘したコラムが19/6/8付日経新聞9面に載った。日経新聞コメンテーター 秋田浩之氏のコラムだ。秋田氏は中国が「街のすみずみに監視カメラを置き、顔認証で特定の個人を追いかけ」、「クレジットカードや交通違反の履歴、国への貢献」などの個人の行動履歴を「人工知能(AI)を使」って処理し、「一人ひとりに点数を付け、管理する」「AI独裁ともいえる体制」を開発し、それを世界に広めつつあることに警告を発している。

このコラムは中国べったりだった日経新聞の論調にようやく変化が現われたという感じだ。だが、日経新聞ならもっと踏み込んだ評論があって良いと思う。それは資本主義や共産主義の基礎になっている思想の問題だ。どんな経済行動にもその基礎となる思想がある。我々には当たり前過ぎて当然のことも国が違えば当然ではなくなる。

ITシステムを駆使した中国の監視システムは強権的な国や旧共産主義/社会主義国にとって理想的な権力基盤になる。このシステムを使えば悪の国家は個人の行動や思想を逐一把握し、自分の都合で逮捕し裁判にかけ、場合によっては死刑にすることもできる。文化大革命時代にこのシステムがあれば殺された者の数は数千万では済まなかっただろう。逆に、善の国家や企業はこのシステムを使って国民の問題や要求を詳細に吸い上げ、それを解決する施策を迅速に打てることになる。

中国の監視システム
出典;日経新聞 2019/6/8付

秋田氏の論旨は以下の通りだ。

一帯一路による「目に見えるインフラ整備よりも、中国によるAI監視システムの拡散のほうが、世界への影響は深刻だ。中国が港や鉄道をつくったからといって、その国の民主主義が後退するとは限らない。しかし、民主的といえない国々に高度な監視システムが渡れば、さらに強権政治に染まってしまう恐れがある。」「もう一つ気がかりなのは、中国がハード面だけでなく、法体系というソフト面でも、デジタル独裁のノウハウを拡散していることだ。そのひな型が2017年6月、中国が制定したインターネット安全法である。」これを使えば「中国内の外国企業も『国家の安全』を理由に情報の開示を迫られ、拒めば処罰されかねない。」これに対する日米欧豪の対処方は2つあって、第1は「中国の監視システムに依存するリスクについて、各国に説明していくこと」であり、第2は「日米豪や欧州連合(EU)が歩調をそろえ、デジタル空間の国際ルールづくりを急ぐこと」だ。

秋山氏の提案は残念ながら日米欧豪他数か国にしか通用しないだろう。何故なら、これらの国にとって言葉による合意(契約書などの文言)は絶対の正義であって契約者はその文言通りに行動しなければならないが、中国の文化圏では言葉による合意は建前でしかなく、自分の本来の野望を隠して相手を騙すプロセスに過ぎない。兵は詭計だと孫子も言っている。この様な相手と平和な関係を維持するには相手を凌ぐ軍事力と経済力を背景に交渉し、契約し、契約を守らせることしかない。

だが、この中国発監視システムに関連する警鐘は19/2/14付日経新聞6面のコラム「『監視資本主義」の衝撃」でFinancial TimesのJohn Thornhill氏が既に述べている。これは発展する科学技術が資本主義の定義をどう変化させるか、という問題だ。これを別稿で紹介したい。


資料; https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45830760X00C19A6TCR000/

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「米『対中100年戦争』の愚」を排す

今起こっている米中戦争を愚かだと言うコラムをMartin Wolf氏(英フィナンシャル・タイムズのコラムニスト)が2019年6月7日の日経新聞朝刊6面に掲載している。題名は「米『対中100年戦争』の愚」だ。これを読んだ感想は、これは①中国を公平に見ていないな、と②中国のプロパガンダは排さねばなるまい、ということだった。詳しく説明したい。

Wolf氏は英国人だから基本的に米国に対して冷笑的だし、第2次世界大戦後の欧州の破壊と混乱の中を苦労して英国に移民した父親の息子として、戦後米国が構築した自由な世界経済システムの中で育ったから、そのシステムを破壊する様な変化には拒否反応を示す様だ。だから、米国が過去30年に亘って築いてきた自由な世界資本主義システムと米国資本の投資を利用して経済成長して来た優等生の中国を擁護することになるのだろう。(Wolf氏のコラムは過去に何度も日経新聞に掲載され、筆者も何度か論評したことがあるから、過去記事を参照されるとよい。)

米中対決


それに、米国憎しの余り中国に有利で米国に不利になる状況しか提示していない。例えば「今年のビルダーバーグ会議」の結論は、“米国はロシアをやっつけ足りなかったが、「ついに敵対するに値する相手が現れた」”というものであり、その「狙いは米国の覇権の維持」であり、「その手段は、中国を支配するか、中国との関係をすべて断つかだ。」といった具合だ。なぜ彼は「中国に騙された。このままだと中国が世界を支配してしまう」という米国の危機感は理解しないで、ウイグル、チベット、満州、内モンゴルでの民族浄化、南沙諸島の軍事基地化、日本の尖閣諸島、弱小国を借金漬けにして自分の奴隷にする一帯一路外交に触れないのだろうか?

Wolf氏は中国が、米国が構築したWTOなどの世界経済の枠組みの“よい子“として振舞って来たのであり、米国の『力のある国が何が正しいかを決める』という対中交渉は間違いであり、多少の誤解や逸脱があっても「丹念に話し合えば解決できるかもしれない」と言う。だが、米国は中国のその場しのぎの甘言を真に受けて30年近く中国を支援し、豊かになれば国際社会の良きメンバーになるだろうと期待していたのが裏切られたと思っている。

中国は自分の真の目的を隠してその場限りの嘘を連ねる。例えば南沙諸島に人工島を作り始めた時中国は世界に、「小さな観測基地を作るだけ」と言い、次に「人が済める施設を作るので武器は持ち込まない」と言い、最後に「軍事基地を作るのは中国の当然の権利だ」と言い、戦闘機や爆撃機が離発着できる様にした。これだけでも中国の言う事が信用できないことが分かる。こんな国と協議して契約して何の意味があるのだろうか?

習近平の求めているのは「偉大な中華民族の復興」であり、アヘン戦争前の中国の覇権と名誉を取り戻すことなのだが、それは西欧や日本を含む全世界が中国に朝貢するという冊封体制であり、その実現のために軍事力を積極的に使う、ということだ。米国は中国に共産主義政権を建てる為に様々な工作をした。先ず、国民党政権を支援して日本軍と戦わせ、日本に戦争を仕掛けて敗退させ、国民党への支援を止めて台湾に追い遣り、鄧小平を支援して中国を開国させ、投資して中国を自国の製造基地にしようとした。米国にとって中国は金も時間もかかった作品なのだ。だが、習近平は米国を凌いで世界の覇権を獲ろうとした。これが米国にとって許容できないことは確かだ。例えば、世界の5Gの通信技術と市場を握れば世界の軍事システムと経済システムと消費者のプライバシーを手中にできる。中国は西側から盗んだ技術でそういうシステムを既に完成し、ウイグルやチベット人の行動を逐一監視し暴力を使って彼らを従わせている。チベットの僧侶達が絶望のあまり自殺し、それが続いて久しい。

Wolf氏は米国務省のキロン・スキナー政策企画局長が「中国政府との対立は『まったく異なる文明、異なるイデオロギーとの戦いであり、米国が過去に経験したことのない戦いだ』」と述べたことに危機感を示す。確かに、スキナー氏は日本のことを忘れているが、「偉大なゲルマン民族の復興」を掲げて第二次世界大戦を起こしたドイツも忘れている。“忘れている”と言うよりこの2国は“既に米国と緊密な軍事同盟国になったので言わなくても良い”の方が当たっている。中国は「遅れて来た青年」なのかも知れない。

Wolf氏は「中国のイデオロギーは」「自由民主主義の脅威になるようなものではない。」と言うが、これは間違い。ウイグルやチベットの惨状を全く知らない訳でもなかろうに。中国のイデオロギーとは共産主義に基づく冊封体制のことだから、「競争と協調の両方を取り入れていくことが、これからの進むべき正しい道だ。」と言っても虚しく聞こえるだけだ。

「現在起きていることの悲劇は、トランプ政権が米中という大国同士の戦いを始めると同時に、同盟諸国を攻撃し、米国が主導して築いてきた戦後の体制を破壊していることだ。」と言うのも間違い。現在米中摩擦の主役は米国議会であり、トランプはその実行機関だ。グローバリストが中国はじめ世界に投資している間に米国民はすっかり貧乏になり、米国内の社会資本は老朽化し、米国はその負担に耐えられなくなっているので大盤振舞いを中盤振舞いにしようとしているだけだ。

つまるところMartin Wolf氏は不勉強なだけなのか、中国の利益の為に働いている多くの白人の一人なのか、どちらかだろう。

この様な国際情勢で日本はどうすべきか?日本の歴史が中国やロシア等の大陸の大国から独立を守る歴史だったことは白村江の戦い以来の歴史を顧みれば分かる。中国からの攻略から日本を守るには米国との同盟が不可欠だ。日本の産業界は中国のプロパガンダに惑わされず中国への投資を損切りし、日本人社員を本国に戻し、米国と組んで第2の中国を他に作るべきだ。

資料;https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45771590W9A600C1TCR000/

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令和時代、日本の製造業が取るべき道は?

「製造業、苦闘の先に勝機も」という題で、令和時代の日本の製造業の進むべき方向を、東京大学教授藤本隆宏氏が2019年1月9日付の日経新聞経済教室欄「平成の終わりに」シリーズ第4回で示唆している。

とはいっても具体的な戦略を提示している訳ではなく、ここに気を付ければ生き残れるよ、程度なのだが。だがこのコラムの白眉は昭和、平成に至る日本の製造業の環境と履歴を図式的に実に分かり易く説明していることだ。多くの人が熟読することをお薦めする。

筆者としては、見出しの「米中共に頼る補完技術を」やポイントとして挙げている「米中恐竜企業の間で生きる哺乳類戦略を」には不満であり、どうして日本が世界をリードできる方向性を示せないのだろうか、と思う。それを説明したい。

コラム子は「日本は昭和の戦後期つまり約40年の冷戦期に経済が成長した国である。平成は冷戦終結とともに始まったポスト冷戦期であり、バブル崩壊後の日本経済停滞の時代だった。」と戦後の70年間を総括し、平成の停滞の原因を2つ挙げている。その筆者なりの表現は「低賃金国の参入」と「デジタル・ネット化」だ。

冷戦期、日本はアナログ環境の産業と技術のすり合わせで製造した個別製品で成功し、そのGDPは世界第2位に達した。例えば日本の家電は欧米の競合相手を駆遂したのだった。米国はこれに深刻な危機感を抱き、産業構造の抜本的な改革を行った。1つは中国などの低開発国を開国し、投資して製造能力を与え、安価な労働力で工業製品を作らせ、日本に対抗することであり、もう1つは産業技術の基盤をアナログからデジタルの移して日本が製造できない製品を作ることだった。インテルが一旦は日本の為に倒産しかけCPUに特化することで繁栄を取り返したことを覚えている人も多いだろう。また、米国は終身雇用制度を捨て、必要な労働力を柔軟に利用できるように社会システムを改めた。IBMが終身雇用を捨てたのは1992年(平成2年)ころだった。

更に、米国は政治力を駆使し、1985年にプラザ合意で超円高の環境を実現し、日本の製造業を苦境に追い込んだ。米国は単に製造技術という狭い領域だけでなく、社会の仕組みをごっそり変え、政治力などの力を全て動員して米国の覇権を日本から護ったと言える。日本人は覇権を護る為なら身を切ることも厭わないアメリカ人のダイナミズムを理解しているだろうか?コラム子は「平成期に入ると、冷戦終結による低賃金人口大国・中国の世界市場参入、デジタル情報革命による家電などの設計比較優位の喪失、さらに複合不況、円高継続もあり、貿易財製造業は苦難の時代が続いた。」と“台風が来て大変でした”みたいな書き方をしているが、その遠因は日本の世界での成功であることは覚えておいた方が良い。

コラム子は平成の30年を初期、中期、後期に分けて説明している。初期は日本が中国の低賃金工場システムに負けた時代、中期は中国の賃金高騰や生産性改善により競争力を取り戻して行く時代、後期はこの傾向が更に強くなり「国内の優良現場はグローバルコスト競争の長いトンネルを抜け、多くが存続可能となった」時代だ。

更に「平成後期の10年代は、スマートフォン(スマホ)、クラウド、人工知能(AI)などデジタル革命が加速化した時代でもあった。」と言い、日本の産業が置かれた状況を“外国勢が上空、低空で優位を占めているのに日本勢は地上に取り残されている”という図式で説明している。上空とはGAFAに代表されるネットとサービスの産業であり、IoTやインダストリー4.0等で上空層の産業の手足や感覚器官になる産業のことだ。

デジタル化の三層構造
出典;日本経済新聞2019年1月9日朝刊23面

そして「日本製造業はグローバル競争の危機は脱しつつあるが、デジタル化では出遅れ、上空で米国勢に制空権を握られ、低空でもドイツ勢の後塵を拝した。地上でもドイツ勢が支援する中国の自動化工場が続々新設され、これらの閉塞感から再び日本製造業悲観論が出ている。」と現状を纏め、日本の製造業の進むべき道として、米国と中国の存在感はとても大きいので、「米中共に頼る補完技術」を充実させ、“米中という恐竜の狭間で哺乳類が生き残れた様な弱者の戦略を“とるべきだと勧める。

だが、日本人は中国が米国と同等の恐竜だと考えて良いのだろうか?日本人は中国が5000年の歴史を持ち古代に日本に文明を持ち込んだ理想の国という幻想が抜き難くあり、中国もそれを利用して自国のイメージを高めている。だが現実は違う。隋や唐が滅び破壊と殺戮の歴史の後に残ったのは日本より遥かに劣り、謀略に長けただけの共産主義国だ。ソ連が崩壊した後そのGDPは発表値の20分の1だったことを顧みれば、中国のGDPは日本の数分の一だと見做してよい。であれば中国を恐竜と見做すのは間違いになる。

米国にとって誤算だったのは、中国が賃金を高騰させて製品の国際競争力を弱めたことと、米国が中心になって構築したグローバルな経済システムや研究開発システムにタダ乗りし、19世紀に失われた覇権を取り戻そうと野心を剥き出しにしたことだ。この米中間の軋轢をコラム子は「米中技術摩擦」と表現しているが、このコラムが載った2019年1月以来事態は急展開し、「米中戦争」と呼ぶ状態になっている。

日本人は中国が且つてヒトラーやユダヤ人に対して行った以上の民族浄化をモンゴルや満州で行い、今はチベットやウイグルで行い、10億の農村戸籍の自国民を奴隷の様に扱い、生体臓器移植を行っていることを知らない訳ではないだろう。米国はこれらの問題を経済問題と同レベルで解決すべく中国を作り変えようとしている。これが「米中戦争」の全体図であり、「米中技術摩擦」はその極く一部でしかない。しかし「米中技術摩擦」の将来を語るには「米中戦争」全体を知らなければならない。

この「米中戦争」の結果、米国が勝ち中国は破れ、中国は技術の覇権を獲ることなく低開発国に甘んじることになるだろう。であれば日本の戦略は「米中恐竜企業の間で生きる哺乳類戦略を」でも「米中共に頼る補完技術を」でもなく、「米国と共に中国や東アジアのイニシアティブを取れる技術と産業政策を」であるべきだ。

日本は天安門事件の後孤立した中国に天皇を送って中国の経済発展に貢献した。だが中国は同時期に反日を強め日本を蚕食する動きを止めない。日本の経済界はこれらの不都合な事実を見ない振りをし、中国に投資を続けている。あまつさえ“中国のハイテク産業に協力しそれを補完する勧業を育てるべきだ”という言説の裏には中国に対する幻想があるのだろう。

中国の一帯一路に順応しようとした国がどういう末路を辿ったか、回答は既に出ている。日本をそういう国、ウイグルやチベットの様にしたくなければ、取るべき進路は明らかだ。日本は日本のアナログ産業の攻勢に対抗しようとして産業構造そのものを変革させた米国のダイナミズムを見習うべきだ。

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「『知性の断片化』の危機回避を」について

「『知性の断片化』の危機回避を」というコラムを猪木武徳(いのき・たけのり)氏が日経新聞の経済教室欄に2019年1月4日付で載せている。

このコラムは「経済教室」の「平成の終わりに」シリーズの第1弾なので猪木氏は平成元年(1989年)のマルタ会談以来30年間の日本経済が「世界の相場と比べて不思議な動きを示してきた」ことを挙げている。その特徴は①人口が、02年から17年マイナスの変化率であること、②実質GDPが02~17年の15年間で15%しか成長していないこと、③消費者物価指数が02年から17年の15年間で3%しか上昇しなかった点であり、これらは主要国と比較して「特異なパフォーマンスを示して」いることを挙げている。
そしてこの「不思議な現象を経済学が十分に」は説明できていないのだから、これらを説明するには「日本国民の精神の内的状況に立ち入って見る必要があ」り、又「歴史的な視点からも日本経済の現状を把握する必要がある。」何故なら「経済活動の基本をなす生産も消費も基本的には企業や家計の予想と心理で動く」からだと述べている。

平成人工等の統計

続いて猪木氏はデモクラシーと急速な技術革新が社会に住む人間の行動様式をどの様に変えて来たかを述べ、最後に「デモクラシーと技術革新が生み出した心の空隙を何で満たすのか、多数の支配の味気なさや不安定性をいかに避けるのか、こう問い直すことがいま求められている。」とコラムを閉じている。筆者の読後感は「ちょっと違うんじゃないか?」だ。それを説明しよう。

先ず、猪木氏はこのコラムで平成の30年の結果起こった3つの問題点を挙げたが、①は平成の30年間、②と③は後半の15年間の現象だ。平成30年の中間で社会を最も大きく変えたのはインターネット革命の結果で、②と③はその結果だ。インターネットは日本に1995年ころ紹介され、2000年から日本社会に浸透し出し、日本人の行動様式を大きく変えた。NTTドコモのi-modeサービスが発表されたのは1999年だ。猪木氏はこの事実に気が付いていただろうか?

次に、猪木氏は日本の社会科学系のインテリらしく、「歴史的な視点」として18世紀後半からの西欧の民主主義と科学技術がもたらすものを説明し、それに対する解決策としてアップルのS.ジョブスが実現した「フェース・ツー・フェースの出会いを目的とした」職場空間を紹介している。「裸の利己主義」なんて“greedy”を肯定する西洋のもので、日本は本来「思いやり」の文化じゃなかったのかと思うし、「出会いを目的とした」職場環境がS.ジョブスの功績なら日本企業の大部屋式オフィスや本多技研の「わいがや」主義はどうなんだ、と突っ込みを入れたくなる。日本の文系学者は西洋の学術成果を日本に当て嵌めようとして失敗する傾向があるし、科学技術を観念でしか理解しないので判断を誤まる。

猪木氏は民主主義と科学技術が「人々をバラバラにして社会の連携を弱める」と批判しているが、民主主義を機能させるためには多くの階層で議論や利益の調整が必要であり、多数決で決まった事には全員が従うことが原則だから、民主主義が「人々をバラバラにして社会の連携を弱める」というのは当たらない。むしろ、人々を階級間の闘争という一つの理論だけで理解しようとする態度が問題なのではないか?それに、西欧型民主主義は明治政府が西欧列強に対抗する為に便宜的に日本に導入した制度であって、日本に本格的に定着したのは大東亜戦争以降の70年間に過ぎない、民主主義をもって日本人の文化(行動の性向)を説明するのは無理がある。科学技術の発達にしても、それはそもそも人間を肉体的労働の苦痛から解放し、より人間的な生活を人々に与えようとするものだったはずだ。左翼思想家はそれを資本家が労働者を搾取する手段と言うだろうが。

猪木氏は「日本では地域社会という身近なところから、自分たちで物事を決めていくという精神は十分成熟しているのだろうか。」と述べ、日本を西洋より遅れていると貶しているが、では、例えば、江戸百万の住民を管理した警官に相当する公務員がたった50人だったという事実をどう説明するのだろうか?これは町内ごとの自治が機能していた証拠であって、自分たちで物事を決めていくという精神は十分に成熟していたと言えないだろうか?幕藩体制下の各藩が半独立国だったことを猪木氏は知らないのだろうか?

生活全般が「宴会型」から「独酌型」へと変わってしまったという指摘にも注釈が必要だ。この変化は過去10数年程度のもので、平成の30年間のものではないし、それはi-modeが普及した後のインターネット時代のものだ。自室に籠ってパソコンやスマホを一人いじっている者の姿は「独酌型」に見えるかもしれないが、その者はSNSでネットの向こうの誰かと情報を交換していたりゲームしていたりするのだ。ネットで起こる「炎上」は「独酌型」では発生し得ない。「高層マンションに住めば『向こう三軒両隣』という親近感は生まれにくい」のも高層マンションが普及したここ10年程度の傾向で、なお且つマンションには管理組合の設置が義務付けられていて、マンション住人は緩い形だが近所付き合いをしなければならない。

猪木氏は論を纏めるにあたって「改めて強く意識すべきは、科学や技術という個別の分野での革新と進歩が、全体としての人類の進歩を必ずしも意味しないということだ。ジグソーパズルの一部を精緻に仕上げても、全体がいかなる絵柄になるのか知ろうとしない限り、われわれは真に進歩したとは言い難い。一つの時代がその前の時代より進歩しているという19世紀的な進歩史観の呪縛から、われわれは自由にならなければならない。先に指摘した日本経済の不思議な現象を経済学が十分に説明できないという問題も、こうした『知性の断片化』と無関係ではなかろう。」と書いている。これについてコメントしたい。

明治以来日本の学者は西欧の学問を学び、それを西洋の知性を日本に当て嵌めようとして来た。日本は西欧とは異なる歴史と形而上学を持つから当然はみ出す部分が出る。先に指摘した「日本経済の不思議な現象を経済学が十分に説明できないという問題」はこの様なはみ出し部分があるということなのだ。そして猪木氏はその故にそれを説明できていない。「知性の断片化」もマックス・ウエーバー以来のそうした言葉だ。“西欧の”「19世紀的な進歩史観の呪縛から」「自由にならなければならない」のは猪木氏のような日本のインテリだ。

日本の産業は西欧の先進技術を消化して自己のものにし、それを利用した産業を創ることに追われてきた。IT産業においては特にそうだ。新技術が次から次に欧米に持ち込まれ、それに個別に対応して全体像を見失った姿を猪木氏は「ジグソーパズルの一部を精緻に仕上げても、全体がいかなる絵柄になるのか知ろうとしない限り、われわれは真に進歩したとは言い難い。」と述べているが、筆者としては「全体をどの様な絵柄にするかのビジョンを自ら作って世界に対してイニシアティブを発揮しない限り、われわれはいつまで経っても追随者のままだ。」と言い換えたい。例えばIBMが未来の社会と自社のビジネスとの関係をどこまで精緻に広範に描いているか知っている日本人はいるだろうか?

最後に、猪木氏が挙げた3つのポイントについてコメントしたい。
1. 平成日本の停滞の背景に日本社会の気質;背景にあるのは「日本人の気質」ではなくて「世界の覇権を守ろうとする米国の対日政策」だろう。ちなみに、中曽根康弘総理の誕生が1982年でプラザ合意が1985年だ。
2. 民主政治と技術革新は社会の連携を弱める;筆者は替りに「リベラリズムの罪」を挙げたい。リベラリズムは失敗した共産主義、社会主義が変態したもの。人の社会を個人とその機能に分解し無機的な社会を作ろうとする。その為産む性としての女性の負担が極端に増え、出生率が低下した。
3. 地方自治や対面の付き合いが重要な役割;インターネットを通じて時間、距離の制限を超えて人々が付き合っているのを猪木氏は理解していないに違いない。地方自治体はIT化を加速し業務処理効率を更に上げるべきだ。

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「ファーウェイ問題」とはそもそも何なのか?

「ファーウェイ 衝突する『正義』」と題して日経新聞本社コメンテーターの中山淳史氏が、ファーウェイ問題は中国と米国の正義のすれ違いなのだから 「サイバー空間の安全性を確保する技術を米中で模索する」べきだと2019年5月25日のDeep Insight欄で述べている。

中山氏はファーウェイが、米国との衝突を避けるために米国社の傘下に入ろうとさえしたが失敗したこと、そのCEOが「国際法と各国の法規を守り、レッドライン(一線)を絶対に越えない」様にしていると言っていることを紹介している。更に「米欧各国が同社と中国政府の関係について様々な報告書を公表しているが、『政府・共産党の会社』と言い切るだけの確証はない。」とも述べ、そもそもF社が従業員の持ち株会社で民主的な会社だと言い、F社が、聞き分けの良いヨイ子なのに「米中貿易摩擦のとばっちり」を受けて困っているという印象を読者に植え付けようとしている。

だが、それは正しいのか?例えば5Gの特許取得数はF社が最も多く、F社が5Gで世界のイニシアティブを獲ろうとしていることが分かる。これは「よゐ子」のすることではない。その特許もほとんどが周辺特許で、核になるものはないと聞く。

HuaWei実績


そもそもファーウェイ(以下F社と呼ぶ)というのはどういう会社なのか?ファーウェイは“華為”と書く。“華為”は創業者の任正非氏が「中華の為に」という意味を込めて命名した会社だが、そこには中国の覇権を世界に広めようという意図を込めたものだ。任氏は人民解放軍出身であり、中国共産党の強力な支援を基に急成長した。中山氏はF社が従業員の意思で経営されている様に言うが、それは間違いだ。中国が共産主義国であることを忘れてはならない。中国の企業にはその中に共産党の支部を置くことが義務付けられており、共産党の指導に従わなければならない。主な経営者も従業員も共産党員であり、彼らは党中央の指示に従わなければならない。今日中国で成功している企業は皆中国共産党配下の企業だ。中山氏はこんなことも知らないはずはあるまいが。

中山氏は任氏を「どこにでもいそうな創業経営者」だというが、彼の実娘はF社の副会長を務め、昨年12月にカナダの空港で逮捕された時7つのパスポートを持っていたという。中国政府の“強力な”支援が無ければこの様なことは不可能だし、その支援はF社が中国共産党に仕えていたからこそ得られたと考えるのが自然だ。F社の急成長の要素は2つある。1つは共産党からの大規模な財政・要員・市場の支援であり。2つ目は中国政府の世界のネットワークを活かした、世界から、主に米国からの技術情報の窃取だ。これは鄧小平時代以来のものだ。日本もその対象でないはずがない。

知的資産に対して正当な対価を支払わなければ、そして膨大な研究費を支払わないでその成果だけを享受できるなら、正直な国や企業はたまったものではない。米国の主要な研究機関や大学は既に中国系研究者を締め出している。日本はどうか?更に恐ろしいことは、ジョージ・オーウエルの「1984年」も真っ青の監視システムをF社が構築してチベットやウイグルなどの国民一人一人を精細に監視し、そのシステムが外国に販売されていることだ。つまり我々が持っている人間や生命の尊厳についての認識がまるで違う非人道的な監視システムが世界に広められようとしているのだ。

更に、言論に対する認識も中国は異質だ。日本人であれば一旦宣誓したことは命をかけて守らなければと思うが、中国は米国の招きでWTOに加盟した時の約束を反故にし、更には言を翻して南シナ海を軍事基地化している。米国が問題にしているのは西側諸国の仲間に入れてもらった時の約束を中国が誠実に履行しないでかえって米国を凌駕し世界の覇権を獲り世界を中国式の統治システム(冊封体制)に組み込もうとしている事なのであって、F社の問題はその一部に過ぎないのだ。今後類似の問題がF社以外にも発生するだろう。

中山氏は「ファーウェイのサプライチェーン(供給網)を分断するだけでは米国や同盟国の産業にも打撃が及び、インターネットそのものの分断につながる懸念もある。正義を互いに振りかざすより、サイバー空間の安全性を確保する技術を米中で模索するのが賢明だと」いうが、米国は中国との供給網が途切れてもその代わりは容易に作れるので問題は無い。日本も同じだ。ベトナムや中南米など代りはいくらでもある。インターネットに至っては、中国が構築したインターネット網は世界から既に孤立している。だから、F社のシステムにバックドアがあるかどうかを話し合おうと呼びかけても意味が無い。無駄なコメントはしないほうが良い。

日本の通信システムや端末産業の凋落と惨状は知っての通りだ。この状況を千歳一隅のチャンスととらえ、日本にNOKIAや華為に代わる5Gを含む産業を育てようと、日経は経団連や国会議員や霞が関はどうして考えないのだろうか?不思議でならない。

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過剰債務の破局 どう防ぐ

「過剰債務の破局 どう防ぐ」というコラムを英Financial Timesのチーフ・エコノミクス・コメンテーター マーティン・ウルフ氏が2019年5月24日の日経新聞に載せている。これは同紙5月10日付のコラム「世界が低インフレの訳」の後編だ。

コラム子は世界がインフレになる可能性とデフレになる可能性についていくつかのシナリオを提示し、どちらも「正しい選択をしなかったがゆえに招いてしまう悲劇」であって不可避ではなく、その施策を提示している。

それには「財政政策と金融政策を組み合わせてインフレなき成長を創出する」のであって、①「債務比率の高い経済を健全化させる方向にインセンティブを修正」し、②「今の借金頼みの資産バブルへの依存を減らすべく、個人消費を高められるような政策に転換」し、③「金融機関の抱える債務を家計のバランスシートに移転させ」れば良いと言う。

そのせいで「実質金利が上昇しても、生産性は伸びているだろうから、」「債務負担におよぼす影響は、まず間違いなく金利上昇の影響を打ち消しておつりが来るはずだ。」と提案した施策によるマイナスの影響を考慮している。

これが日本経済にそのまま適用できるのだろうか?

日本経済の「長期停滞」は日本以外の大国や小国が成長している中での停滞であって、コラム子に見えている世界とはいささか違う気がする。もっとも、政府債務の増大や低金利は日本では小渕政権時に始まり、この点では世界をリードして来た。

コラム子の③の提案は要するに「企業の借金を減らし家庭の借金を増やす」ということだから、これを知ったら日本の選挙民は怒るだろう。日本経済の問題点は国家が借金に塗れ、企業に現金が溢れ、家庭が貧乏になっていることにあるからだ。かっての不況で金融機関に貸し剥がしに苦しんだ企業は労働分配率を低め(給与を低くし)、ひたすら現金を貯め込み、新規事業投資に金をケチった。その為日本経済はGAFAの様な新規産業も生まれず、自動車産業にすがって生き延びることになった。つまり、IT時代にふさわしい形に産業構造を変態(メタモルフォーゼ)させることができないでいる。例えば中国は国家の強権をもってGAFAに対応する企業群を育てており、日本はそれを見て「すごいな」としかいうことができない。

日本のIT産業はメインフレーム時代の発想のままで化石化している。「情報こそ力だ」ということが経団連も政府も分かっていないのではないか?ネット産業も弱小企業のままで、トップの楽天といえどもGAFA並みには育っておらず米国や中国の後塵を拝している。

気になるのは楽天が5Gのネットインフラ事業を始めようとしていることだ。ネットインフラ事業はネットサービス事業とは全く性格が違い、1企業がこれら2種の事業をすると性格分裂に陥ってしまう。経営者の頭脳が異なる思考体系に耐えられないだろう。ネットインフラは事業モデルが比較的単純で収益を見通しやすいのが落とし穴だ。かってNiftyというネットサービス会社があって成功していたがハードメーカの富士通に買収されてすっかり精彩を失った。NIftyも同じ罠に落ちた。

Googleやアマゾンがネットサービスを提供していないのは、彼らはネットベースのビジネスモデルが見えているからだ。しかし、ハード寄りの発想しかできない日本のIT経営者に彼らと同程度の、高度で複雑な抽象概念を処理して将来のビジネスモデルの構想を構築できるだろうか?それができたとして日本の投資家はそれを理解して忍耐強く事業家を支援し続けられるだろうか?

だから日本の取るべき政策は①労働分配率を上げ、②福祉などの低賃金を上げて未就労の日本人に働く喜びを感じさせ、③意欲ある若いネット起業人に20年単位の投資をしてGAFAに相当する企業を育て、④政府のIT政策の責任者に40歳代の活きの良い者を充てることだ。

折しも米国は中国の世界覇権の意欲を挫こうとしている。この為世界経済は一時的な低迷を避けられないだろうが、その影響は軽微なものになるはずだ。何故なら、それは中国への投資を損切りし中国以外のどこかに新たにサプライチェーンを延ばすことだからだ。

筆者はかってこの状況は日本に漁夫の利をもたらすとブログで書いたことがある。例えば、華為や三星が抜けた穴を埋めるのはSONYや富士通だ。日本に不足しているのは、起業家精神とそれを支える健全な長期投資だ。

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