fc2ブログ

KenConsulting Blog

KenConsultingの本多謙が政治/経済記事を独自の視点で評論します

デジタルサミット2018に寄せて(2)

情報産業は国家安全保障にどう関わるべきか

日本経済新聞社が6月4,5日 に「世界デジタルサミット 2018」を開催し、そのライブ中継を見た。テーマは「シンギュラリティへの挑戦」。その動画アーカイブは後日公開の予定)サミット2日目の最後のプログラムは「サイバー・ウォーフェアと世界協調」だった。この題は矛盾する概念を含んでいる。“ウォー(War)”は対立の結果発生するが“協調”は平和に関連する概念だ。何故こういう題になったのか?

インターネットは世界の距離の概念を無くし、完全な民主主義を実現すると期待された。世界の距離の概念が無くなれば人々は互いに理解し合い世界は平和になるだろうと理想主義者たちは考えた。米国の投資家たちはインターネットのこの性質を利用してグローバルなインターネットサービスのビジネスモデルを実現した。その結果、グーグル、アマゾン、フェイスブック、マイクロソフトなどがグローバルにネットワークサービスを提供するに至った。

だが、人と人は話し合えば話し合うほど違いがはっきりし、妥協できない状況に陥ることもある。数千年間民族対立を繰り広げてきたパレスチナでイスラエル国境の壁が建設されているのはその好例だ。最近はトランプがメキシコ国境に壁を造ろうとしている。メキシコからの不法移民や麻薬などの犯罪流入を阻止するためだ。国家という生命財産文化産業のユニットを安全に保つには利益の相反する国家に対して障壁が必要だ。

グーグル、アマゾン、フェイスブック、マイクロソフトなど世界規模でサービスを提供するサービス事業者が世界中の個人の売買や移動や主張などの動きに関する情報を占有するに至りこれに対処する動きがある。例えば、5月31日の日経新聞朝刊6面の「企業データと大衆監視」という寄稿(https://r.nikkei.com/article/DGKKZO31145610Q8A530C1TCR000?type=edition&name=paper&edition=20180531M101)ではラナ・フォルーハー氏(コラムニスト)はその危険性について述べている。これらの米国系ネットサービスのサーバーは米国にあり、日本国民のこれらのサービスのユーザの情報を日本政府は把握できないし制御できない。韓国資本のメッセージングサービスLINEのサーバーは韓国内にあり、日本国はそれに対して無防備だ。これは国家主権を半分放棄したものと言える。EU(欧州連合)はこの危険性を認識し、GDPR(一般データ保護規則 General Data Protection Regulation)を制定した。中国政府もこれを認識し、自国にTwitterやSMSやGoogleやAmazonに対抗するサービス事業者(バイドウ、アリババ、テンセントなど)を育て世界的にサービスを拡大し同時に国内を世界のインターネット網から隔離している。中国共産党政府は第2次世界大戦後、満州やチベットに侵攻しその地の民族の言語と文化を破壊し、若い女性を強制移住させて民族浄化し、ジョージ・オーウエルの描く「1948年」社会体制を構築中だ。

残念ながら、デジタルサミットのフォーラムで発言した日本政府関係者にはこうした危機感は、当日の発言を聞く限り、薄かった様に見える。「日本だって世界中の建設機械の稼働に関するデータは日本に集めてる」からお互い様だという趣旨の発言だったが、何千万という国民の日々の通信、会話、売買などの情報と例えば建設機械の摩耗データを同列に扱うのは間違いだ。某国が自国にある日本人のメッセージングサービスの利用履歴やコンテンツの視聴履歴や書籍の購入履歴を基に個人の思想や趣味嗜好を抽出し、使えそうな個人を特定し、それを工作員に育て上げることも可能だからだ。

日本政府はその様な脅威から自国民を護らなければならない。何故なら、電子機器が社会のインフラの隅々にまで浸透した現代では、「銃やミサイルなどの火器による戦闘行為」はその戦争の最終形態であり、その前の経済制裁やサイバー攻撃や情報漏洩などの血を流さない戦争が日常になっているからだ。北朝鮮や中国から米国に対するサーバー攻撃は日常に起きているし、日本もその対象外ではない。米国やEUの様な国々とはこの様な国家安全保障の仕組みを議論し調整して一定ルールに収束させることも可能だろう。だが、西側に明らかに敵対している北朝鮮や中国とはどの様な対抗措置が可能だろうか?

日本にはインターネット情報産業のビジネスモデルがいくつもあったし、今もある。楽天やニコニコ動画等だ。だがその多くが米国が敷いた地地球規模という点で米国企業に負けている。日本の政策担当者は米国のinitiativeに無批判に従っているだけかも知れない。日本は日本の国家安全保障という観点からインターネットによる情報産業の構造を再設計し育成する必要がありはしないか?

(資料; http://www.digital-summit.jp/2018/streaming.html )
関連記事
スポンサーサイト



PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する