
トランプ氏と「戦時」の資質 F・ルーズベルトとの落差
日経新聞本社コメンテーターの菅野幹雄氏が、トランプ大統領は戦時の資質が無い、とこき下ろしている(2020年4月7日の日経新聞「Deep Insight」欄)。筆者はマスコミがレトリックを駆使して読者を無意識のうちに自分の望む方向に誘導する技術にかねがね感心している。菅野氏のこのコラムを題材にその手法を明らかにしてみたい。
題材は今年11月の米国大統領選挙だ。菅野氏(以下、コラム子という)はトランプ氏に再選して欲しくないと思っているようだ。そこでコラム子はこのコラムを以下のように構成したようだ。
① 新型コロナウイルス禍に対する対応を多々貶し、
② これに対して米国企業の対応を持ち上げ、
③ ルーズベルトが戦時下の米国大統領として如何に素晴らしかったかを強調し、
④ トランプ氏が米国世論の同調を得ていないことを匂わせた。
コラムの後半でコラム子は
⑤ 民主党のバイデン元副大統領がトランプ氏を上回る人気であると述べ、
⑥ クオモ・ニューヨーク州知事候補も忘れてはならないと言い、
⑦ トランプ氏が両者に非協力的だと評し、
⑧ 新型コロナとの「戦争」に勝たなければトランプ氏の再選は危うい、
とコラムを閉じている。

コラム子は①で2時間以上に亘るトランプ大統領の記者会見を「異端のリーダー」が「根拠なき楽観と自己主張」を繰り返し、「場違いの政敵批判」を行い、彼の欠点が「露見」したと非難している。これは多分に決めつけだ。このタイプのトランプ非難はトランプ氏が大統領候補として有力視され始めたころから民主党側が執拗に繰り返して来たレトリックなので今さら驚かない。何故ならトランプ氏は政界のエスタブリッシュメントではないよそ者だからだ。だが、彼が2時間を超える記者会見をする事自体が国民との対話を重視している証拠だし、2時間の記者会見に耐えられるなんて73歳とは思えない体力だ。これは戦時のリーダーにとって必須だ。それに政治家であれば国民の不安を打ち消す為に自分が達成した経済好況に触れたり国民に勇気を与えるメッセージを与えようとするのは当然だし、それは必要だ。それをコラム子は「根拠なき楽観と自己主張」と独断する。そもそも中国はこの新型コロナウイルスの原産国であるにも係わらず情報を隠蔽し嘘の発表を続けて来た。その為に米国や西欧世界の多くの国は初動対応が遅れた。日本も遅れた。従ってトランプ氏のメッセージが当初は楽観的だったのも仕方のないことだ。トランプ氏のメッセージがより多くの情報を得るに従って厳しいものに変ったのを非難するのは不当だ。非難されるべきは嘘の報告を連ねた中国にある。コラム子はトランプ氏に対する否定的な言辞を並べることで読者にトランプ氏に対する否定的印象を植え付け、間接的に中国を擁護しようとしたのではないか?
更に、コラム子は(②で)トランプ氏が「米医療メーカーの製品を自分の成果のように語った」とトランプ氏の人格を否定した。更にコラム子は米軍や米国企業の柔軟で迅速な対応を褒め上げ、トランプ氏の2月26日の「復活祭(4月12日)までに経済を再開させたい」という発言を「軽口」と決めつけ、「器量に不安のあるリーダーの危機管理を、超大国の英知が辛うじて支えている。」と評した。この評価には誤りがある。大統領は米軍の最高司令官なのだから米軍の迅速な対応は大統領の実績だ。更に、先が見えない国民の不安を減らし安心させるために大統領として「復活祭までに」は何とかしたいと言うのも納得できる。そもそも大統領は事態終息を約束した訳ではない。第一、疫学の専門家だって情報不足の為事態終息を予想できていないのだから。検査機を紹介したって、大統領がそれを作ったものでないことは誰だって分かる。ニュースキャスターだって新製品があれば紹介しているではないか。こういうメッセージを「軽口」と決めつけたり大統領の人格を貶めるコラム子は偏っている。
(③で)コラム子は第2次世界大戦中の炉辺談話で有名なルーズベルト大統領をトランプと比較してトランプを貶めているが、そもそも炉辺談話にはゴーストライターがいた訳で、トランプの様に本人の言葉で語った訳ではない。それに炉辺談話は1回13分程度で、トランプ氏の2時間よりずっと短い。トランプの方が国民との対話にずっと汗を流しているには明らかだ。コラム子はルーズベルトを「真珠湾攻撃の屈辱を経て」と紹介している。これは日本人なら使ってはいけない表現だ。ルーズベルトが日本を真珠湾攻撃に引き摺り込み200万人の日本人が死ぬ戦争に誘導した張本人なことは日本人なら知ってる。
コラム子は「彼の残した言葉のひとつに『嘘を何度繰り返しても真実にはならない』(39年のラジオ演説)がある。事実を曲げ、自分の落ち度を認めないトランプ流は、無数の嘘を繰り返すことで、それが真実のように人々に思わせる手法といえる。とてつもない落差だ。」とトランプ氏が嘘を繰り返していると貶す。だがどれが嘘なのか、コラム子は明らかにしていない。コラム子はトランプ側に否定的な言葉を並べてトランプ氏の印象を悪くしようとしている。それに日本の敵のルーズベルトと比較するのは日本の読者にとって逆効果だ。
(④で)ルーズベルト上げの補強にコラム子は「米世論調査の第一人者であるジョン・ゾグビー氏」のトランプ氏に対する否定的見解を持ち出した。この見解はゾグビー氏個人の見解だが、コラム子のレトリックは米国世論の大勢がトランプ氏に否定的だという印象を読者に抱かせる。これはトリック的ではないか?
コラム子は次に(⑤で)民主党元副大統領で次の民主党大統領候補のバイデン氏を持ち出し、彼が支持率でトランプ氏より優位だとバイデンを揚げ、更にバイデン氏が超党派の協力を求めているのにトランプ氏は冷淡だというイメージを醸成している。(⑦)コラム子は更に(⑥で)クオモ・ニューヨーク州知事の人工呼吸器不足の訴えを挙げ連邦政府(つまりトランプ氏)の対応失敗を印象付けようとしている。
コラム子はコラムの終段(⑧)で、新型コロナとの「戦争」に勝たなければトランプ氏の再選は危うい、とコラムを締め括っている。コラム子は様々な例証を挙げてトランプ氏が大統領に相応しくないと主張した。その対抗馬として挙げているのが民主党のバイデン大統領候補だ。バイデン氏はコロナ禍の為に苦境にあるので、コラムを読み終えた読者の心情はバイデン寄りになっていることだろう。
だが、バイデン氏については、コラム子はあえて触れなかったのだろうが、彼は疑惑満載のクリントン夫妻と同様とても、とても中国寄りなのだ。次期米国大統領はトランプ氏でなければバイデン氏になる。バイデン氏が大統領になれば中国にとって大きな利益になる。コラム子がこの力関係を知らないはずが無い。新型コロナウイルスが武漢発の細菌兵器であることは世界の多くの研究者が指摘しているところであり、世界の主要国が中国に賠償を求める動きが加速している。そんな状況で、バイデン候補に味方するように暗に読者を誘導することがナニを意味するか、日経新聞の幹部であるコラム子よく承知しているに違いない。
資料 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57716130W0A400C2TCR000/
日経新聞本社コメンテーターの菅野幹雄氏が、トランプ大統領は戦時の資質が無い、とこき下ろしている(2020年4月7日の日経新聞「Deep Insight」欄)。筆者はマスコミがレトリックを駆使して読者を無意識のうちに自分の望む方向に誘導する技術にかねがね感心している。菅野氏のこのコラムを題材にその手法を明らかにしてみたい。
題材は今年11月の米国大統領選挙だ。菅野氏(以下、コラム子という)はトランプ氏に再選して欲しくないと思っているようだ。そこでコラム子はこのコラムを以下のように構成したようだ。
① 新型コロナウイルス禍に対する対応を多々貶し、
② これに対して米国企業の対応を持ち上げ、
③ ルーズベルトが戦時下の米国大統領として如何に素晴らしかったかを強調し、
④ トランプ氏が米国世論の同調を得ていないことを匂わせた。
コラムの後半でコラム子は
⑤ 民主党のバイデン元副大統領がトランプ氏を上回る人気であると述べ、
⑥ クオモ・ニューヨーク州知事候補も忘れてはならないと言い、
⑦ トランプ氏が両者に非協力的だと評し、
⑧ 新型コロナとの「戦争」に勝たなければトランプ氏の再選は危うい、
とコラムを閉じている。

コラム子は①で2時間以上に亘るトランプ大統領の記者会見を「異端のリーダー」が「根拠なき楽観と自己主張」を繰り返し、「場違いの政敵批判」を行い、彼の欠点が「露見」したと非難している。これは多分に決めつけだ。このタイプのトランプ非難はトランプ氏が大統領候補として有力視され始めたころから民主党側が執拗に繰り返して来たレトリックなので今さら驚かない。何故ならトランプ氏は政界のエスタブリッシュメントではないよそ者だからだ。だが、彼が2時間を超える記者会見をする事自体が国民との対話を重視している証拠だし、2時間の記者会見に耐えられるなんて73歳とは思えない体力だ。これは戦時のリーダーにとって必須だ。それに政治家であれば国民の不安を打ち消す為に自分が達成した経済好況に触れたり国民に勇気を与えるメッセージを与えようとするのは当然だし、それは必要だ。それをコラム子は「根拠なき楽観と自己主張」と独断する。そもそも中国はこの新型コロナウイルスの原産国であるにも係わらず情報を隠蔽し嘘の発表を続けて来た。その為に米国や西欧世界の多くの国は初動対応が遅れた。日本も遅れた。従ってトランプ氏のメッセージが当初は楽観的だったのも仕方のないことだ。トランプ氏のメッセージがより多くの情報を得るに従って厳しいものに変ったのを非難するのは不当だ。非難されるべきは嘘の報告を連ねた中国にある。コラム子はトランプ氏に対する否定的な言辞を並べることで読者にトランプ氏に対する否定的印象を植え付け、間接的に中国を擁護しようとしたのではないか?
更に、コラム子は(②で)トランプ氏が「米医療メーカーの製品を自分の成果のように語った」とトランプ氏の人格を否定した。更にコラム子は米軍や米国企業の柔軟で迅速な対応を褒め上げ、トランプ氏の2月26日の「復活祭(4月12日)までに経済を再開させたい」という発言を「軽口」と決めつけ、「器量に不安のあるリーダーの危機管理を、超大国の英知が辛うじて支えている。」と評した。この評価には誤りがある。大統領は米軍の最高司令官なのだから米軍の迅速な対応は大統領の実績だ。更に、先が見えない国民の不安を減らし安心させるために大統領として「復活祭までに」は何とかしたいと言うのも納得できる。そもそも大統領は事態終息を約束した訳ではない。第一、疫学の専門家だって情報不足の為事態終息を予想できていないのだから。検査機を紹介したって、大統領がそれを作ったものでないことは誰だって分かる。ニュースキャスターだって新製品があれば紹介しているではないか。こういうメッセージを「軽口」と決めつけたり大統領の人格を貶めるコラム子は偏っている。
(③で)コラム子は第2次世界大戦中の炉辺談話で有名なルーズベルト大統領をトランプと比較してトランプを貶めているが、そもそも炉辺談話にはゴーストライターがいた訳で、トランプの様に本人の言葉で語った訳ではない。それに炉辺談話は1回13分程度で、トランプ氏の2時間よりずっと短い。トランプの方が国民との対話にずっと汗を流しているには明らかだ。コラム子はルーズベルトを「真珠湾攻撃の屈辱を経て」と紹介している。これは日本人なら使ってはいけない表現だ。ルーズベルトが日本を真珠湾攻撃に引き摺り込み200万人の日本人が死ぬ戦争に誘導した張本人なことは日本人なら知ってる。
コラム子は「彼の残した言葉のひとつに『嘘を何度繰り返しても真実にはならない』(39年のラジオ演説)がある。事実を曲げ、自分の落ち度を認めないトランプ流は、無数の嘘を繰り返すことで、それが真実のように人々に思わせる手法といえる。とてつもない落差だ。」とトランプ氏が嘘を繰り返していると貶す。だがどれが嘘なのか、コラム子は明らかにしていない。コラム子はトランプ側に否定的な言葉を並べてトランプ氏の印象を悪くしようとしている。それに日本の敵のルーズベルトと比較するのは日本の読者にとって逆効果だ。
(④で)ルーズベルト上げの補強にコラム子は「米世論調査の第一人者であるジョン・ゾグビー氏」のトランプ氏に対する否定的見解を持ち出した。この見解はゾグビー氏個人の見解だが、コラム子のレトリックは米国世論の大勢がトランプ氏に否定的だという印象を読者に抱かせる。これはトリック的ではないか?
コラム子は次に(⑤で)民主党元副大統領で次の民主党大統領候補のバイデン氏を持ち出し、彼が支持率でトランプ氏より優位だとバイデンを揚げ、更にバイデン氏が超党派の協力を求めているのにトランプ氏は冷淡だというイメージを醸成している。(⑦)コラム子は更に(⑥で)クオモ・ニューヨーク州知事の人工呼吸器不足の訴えを挙げ連邦政府(つまりトランプ氏)の対応失敗を印象付けようとしている。
コラム子はコラムの終段(⑧)で、新型コロナとの「戦争」に勝たなければトランプ氏の再選は危うい、とコラムを締め括っている。コラム子は様々な例証を挙げてトランプ氏が大統領に相応しくないと主張した。その対抗馬として挙げているのが民主党のバイデン大統領候補だ。バイデン氏はコロナ禍の為に苦境にあるので、コラムを読み終えた読者の心情はバイデン寄りになっていることだろう。
だが、バイデン氏については、コラム子はあえて触れなかったのだろうが、彼は疑惑満載のクリントン夫妻と同様とても、とても中国寄りなのだ。次期米国大統領はトランプ氏でなければバイデン氏になる。バイデン氏が大統領になれば中国にとって大きな利益になる。コラム子がこの力関係を知らないはずが無い。新型コロナウイルスが武漢発の細菌兵器であることは世界の多くの研究者が指摘しているところであり、世界の主要国が中国に賠償を求める動きが加速している。そんな状況で、バイデン候補に味方するように暗に読者を誘導することがナニを意味するか、日経新聞の幹部であるコラム子よく承知しているに違いない。
資料 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO57716130W0A400C2TCR000/
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