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KenConsultingの本多謙が政治/経済記事を独自の視点で評論します

過剰債務の破局 どう防ぐ

「過剰債務の破局 どう防ぐ」というコラムを英Financial Timesのチーフ・エコノミクス・コメンテーター マーティン・ウルフ氏が2019年5月24日の日経新聞に載せている。これは同紙5月10日付のコラム「世界が低インフレの訳」の後編だ。

コラム子は世界がインフレになる可能性とデフレになる可能性についていくつかのシナリオを提示し、どちらも「正しい選択をしなかったがゆえに招いてしまう悲劇」であって不可避ではなく、その施策を提示している。

それには「財政政策と金融政策を組み合わせてインフレなき成長を創出する」のであって、①「債務比率の高い経済を健全化させる方向にインセンティブを修正」し、②「今の借金頼みの資産バブルへの依存を減らすべく、個人消費を高められるような政策に転換」し、③「金融機関の抱える債務を家計のバランスシートに移転させ」れば良いと言う。

そのせいで「実質金利が上昇しても、生産性は伸びているだろうから、」「債務負担におよぼす影響は、まず間違いなく金利上昇の影響を打ち消しておつりが来るはずだ。」と提案した施策によるマイナスの影響を考慮している。

これが日本経済にそのまま適用できるのだろうか?

日本経済の「長期停滞」は日本以外の大国や小国が成長している中での停滞であって、コラム子に見えている世界とはいささか違う気がする。もっとも、政府債務の増大や低金利は日本では小渕政権時に始まり、この点では世界をリードして来た。

コラム子の③の提案は要するに「企業の借金を減らし家庭の借金を増やす」ということだから、これを知ったら日本の選挙民は怒るだろう。日本経済の問題点は国家が借金に塗れ、企業に現金が溢れ、家庭が貧乏になっていることにあるからだ。かっての不況で金融機関に貸し剥がしに苦しんだ企業は労働分配率を低め(給与を低くし)、ひたすら現金を貯め込み、新規事業投資に金をケチった。その為日本経済はGAFAの様な新規産業も生まれず、自動車産業にすがって生き延びることになった。つまり、IT時代にふさわしい形に産業構造を変態(メタモルフォーゼ)させることができないでいる。例えば中国は国家の強権をもってGAFAに対応する企業群を育てており、日本はそれを見て「すごいな」としかいうことができない。

日本のIT産業はメインフレーム時代の発想のままで化石化している。「情報こそ力だ」ということが経団連も政府も分かっていないのではないか?ネット産業も弱小企業のままで、トップの楽天といえどもGAFA並みには育っておらず米国や中国の後塵を拝している。

気になるのは楽天が5Gのネットインフラ事業を始めようとしていることだ。ネットインフラ事業はネットサービス事業とは全く性格が違い、1企業がこれら2種の事業をすると性格分裂に陥ってしまう。経営者の頭脳が異なる思考体系に耐えられないだろう。ネットインフラは事業モデルが比較的単純で収益を見通しやすいのが落とし穴だ。かってNiftyというネットサービス会社があって成功していたがハードメーカの富士通に買収されてすっかり精彩を失った。NIftyも同じ罠に落ちた。

Googleやアマゾンがネットサービスを提供していないのは、彼らはネットベースのビジネスモデルが見えているからだ。しかし、ハード寄りの発想しかできない日本のIT経営者に彼らと同程度の、高度で複雑な抽象概念を処理して将来のビジネスモデルの構想を構築できるだろうか?それができたとして日本の投資家はそれを理解して忍耐強く事業家を支援し続けられるだろうか?

だから日本の取るべき政策は①労働分配率を上げ、②福祉などの低賃金を上げて未就労の日本人に働く喜びを感じさせ、③意欲ある若いネット起業人に20年単位の投資をしてGAFAに相当する企業を育て、④政府のIT政策の責任者に40歳代の活きの良い者を充てることだ。

折しも米国は中国の世界覇権の意欲を挫こうとしている。この為世界経済は一時的な低迷を避けられないだろうが、その影響は軽微なものになるはずだ。何故なら、それは中国への投資を損切りし中国以外のどこかに新たにサプライチェーンを延ばすことだからだ。

筆者はかってこの状況は日本に漁夫の利をもたらすとブログで書いたことがある。例えば、華為や三星が抜けた穴を埋めるのはSONYや富士通だ。日本に不足しているのは、起業家精神とそれを支える健全な長期投資だ。
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