
「もう一つの米中覇権争い」というコラムを日経新聞編集委員の松尾博文氏が2019年5月4日のDeep Insight欄で書いておられる。氏は「米国と中国の摩擦」を「エネルギーの視点で見れば、世界最大の生産国である米国と、世界最大の消費国である中国の攻防と捉えることができる。」と問題提起し、米中の狭間にいる日本はどうすべきかを提案している。筆者はそれに強烈な違和感を感じる。何故かを説明しよう。
松尾氏は以下の様に述べる。
エネルギーの重要性について松尾氏は「エネルギーの確保と国際政治は表裏一体だ。20世紀の2度の世界大戦を経て、石油の確保は国家安全保障の要となり、石油をめぐる地政学が国際政治の重要な関心事になってきた。」と説明している。エネルギーを制する者が世界の覇権を制するのであり、「『エネルギー支配』に動く米国に対し、エネルギーの次世代技術を押さえて米国の支配に挑戦する中国」、と松尾氏はエネルギーを巡って米国と世界が競合している構図を提示している。
この対立の構図に決定的な影響を与えたのが米国のシェール革命で、これにより米国は「ロシアやサウジアラビアを抜いて世界最大の産油国に躍り出」、「米国のエネルギー政策は不足への対応から、余剰への対応に軸足が移った」。
一方中国は「世界最大の1次エネルギー消費国となり、その差は年々開いて」おり、「米国主導の石油・ガス支配の傘に中国を入れたい米国と、入りたくない中国の思惑は反発する」状態になっている。この状態を打破しなければ中国は「一帯一路」という「新興国市場を開拓」し「沿線に勢力圏を広げ」るという「安全保障上の目標」を実現できない。

そこで中国はEVや風力発電等の次世代技術に注力し、その「サプライチェーン全体を押さえにかか」っており、実績をあげつつある。事実「17年の太陽光発電パネル出荷の世界上位10社中、9社が中国メーカー」であり「同年に販売されたEVの5割は中国向けだった。」中国政府は国家資本主義による「層の厚い企業群」を「強力な導入支援策」で「後押し」し、「次世代技術で主導権を握」ろうとする。これに成功すれば中国は「世界の4分の1近いエネルギーを消費する中国が仕掛けるエネルギー転換は世界の流れを決め、将来のエネルギー秩序を支配する力を持ち」、米国を凌駕できる。
松尾氏はこの様に中国がエネルギーの次世代技術で米国を圧倒するであろうことを述べ、「エネルギー覇権の行方を決める」のが「資源の多寡でなく、技術の優位性で決まる時代。米中攻防のはざまで日本はどう動くべきか。」と読者に問いを投げかけている。彼はその解答として「重要なのは中国主導のエネルギー秩序にあらがったり、なすすべなくのみ込まれたりするのではなく、欠かせない存在として加わること」を示し、更に日本の政界にも「エネルギー戦略も軸足を移す必要がある。」と注文している。
違和感は、松尾氏は日本を米国と中国という強大国の狭間で翻弄される弱小国だと見ていることだ。どんな議論にも前提条件や仮定がある。松尾氏は、中国が昇り龍であることは間違いなく、弱小日本は米国を忘れて中国に踏み潰されない様にしなければならない、と言っている。この前提条件は正しいのか?中国の経済統計は出鱈目だあることは経済学者でなくとも知っている。ソ連が崩壊した後そのGDPは20倍の水増しだったことが分かっている。だから中国のGDPは実質発表値の20分の1で、そうすると日本はGDP世界第2位であり続けていることになる。GDP2位の国に、GDP3位の国に踏み潰されないように貢献しろと言うのは笑止である。
更に、松尾氏の根拠として挙げている中国の太陽光発電パネルの製造だが、中国の製造量は多いがその技術はほとんど外国のをパクったものだ。中国産業定番の低品質製品の超大量製造でこの産業は壊滅しかけている。EVについても同様だ。中国は技術の消費国ではあっても開発・供給国ではない。それに、中国がエネルギーや食糧を外国に依存する様にしたのは米国の戦略だ。中国は米国の掌の上で踊っているにすぎない。
松尾氏の主張に従えば、日本は中国に「国内向け限定ですよ」と新幹線の技術を提供して競合相手を育てた日本の鉄道運送産業の二の舞を演じることになりそうだ。最初から約束を守る気が無く技術を盗んでやろうと構えている相手とどうやったら国益に適う関係を築けるか教えて欲しいものだ。
折しも米中貿易戦争が一段と過熱し、中国に入れ込んだ韓国経済が壊滅的打撃を受けている。韓国を見れば中国投資がどんなに危険か子供でも判る。華為も世界から孤立しつつある。米国は自由貿易世界を構成した自由、平等などの価値を守る為に、米国が構築した世界貿易の仕組みにただ乗りして世界の覇権を獲ろうとする国を許さないのだ。日本の繁栄がこの仕組みに乗ったものである以上、日本の取るべき進路は明らかだろう。日経新聞子がこれを理解しないはずがない。
日経新聞は中国の提灯持ちをいい加減止めて、どうしたら日本のエネルギー自給率を上げたり安定供給を図るかの政策を提言すべきだ。書くことはいくらでもある。
松尾氏は以下の様に述べる。
エネルギーの重要性について松尾氏は「エネルギーの確保と国際政治は表裏一体だ。20世紀の2度の世界大戦を経て、石油の確保は国家安全保障の要となり、石油をめぐる地政学が国際政治の重要な関心事になってきた。」と説明している。エネルギーを制する者が世界の覇権を制するのであり、「『エネルギー支配』に動く米国に対し、エネルギーの次世代技術を押さえて米国の支配に挑戦する中国」、と松尾氏はエネルギーを巡って米国と世界が競合している構図を提示している。
この対立の構図に決定的な影響を与えたのが米国のシェール革命で、これにより米国は「ロシアやサウジアラビアを抜いて世界最大の産油国に躍り出」、「米国のエネルギー政策は不足への対応から、余剰への対応に軸足が移った」。
一方中国は「世界最大の1次エネルギー消費国となり、その差は年々開いて」おり、「米国主導の石油・ガス支配の傘に中国を入れたい米国と、入りたくない中国の思惑は反発する」状態になっている。この状態を打破しなければ中国は「一帯一路」という「新興国市場を開拓」し「沿線に勢力圏を広げ」るという「安全保障上の目標」を実現できない。

そこで中国はEVや風力発電等の次世代技術に注力し、その「サプライチェーン全体を押さえにかか」っており、実績をあげつつある。事実「17年の太陽光発電パネル出荷の世界上位10社中、9社が中国メーカー」であり「同年に販売されたEVの5割は中国向けだった。」中国政府は国家資本主義による「層の厚い企業群」を「強力な導入支援策」で「後押し」し、「次世代技術で主導権を握」ろうとする。これに成功すれば中国は「世界の4分の1近いエネルギーを消費する中国が仕掛けるエネルギー転換は世界の流れを決め、将来のエネルギー秩序を支配する力を持ち」、米国を凌駕できる。
松尾氏はこの様に中国がエネルギーの次世代技術で米国を圧倒するであろうことを述べ、「エネルギー覇権の行方を決める」のが「資源の多寡でなく、技術の優位性で決まる時代。米中攻防のはざまで日本はどう動くべきか。」と読者に問いを投げかけている。彼はその解答として「重要なのは中国主導のエネルギー秩序にあらがったり、なすすべなくのみ込まれたりするのではなく、欠かせない存在として加わること」を示し、更に日本の政界にも「エネルギー戦略も軸足を移す必要がある。」と注文している。
違和感は、松尾氏は日本を米国と中国という強大国の狭間で翻弄される弱小国だと見ていることだ。どんな議論にも前提条件や仮定がある。松尾氏は、中国が昇り龍であることは間違いなく、弱小日本は米国を忘れて中国に踏み潰されない様にしなければならない、と言っている。この前提条件は正しいのか?中国の経済統計は出鱈目だあることは経済学者でなくとも知っている。ソ連が崩壊した後そのGDPは20倍の水増しだったことが分かっている。だから中国のGDPは実質発表値の20分の1で、そうすると日本はGDP世界第2位であり続けていることになる。GDP2位の国に、GDP3位の国に踏み潰されないように貢献しろと言うのは笑止である。
更に、松尾氏の根拠として挙げている中国の太陽光発電パネルの製造だが、中国の製造量は多いがその技術はほとんど外国のをパクったものだ。中国産業定番の低品質製品の超大量製造でこの産業は壊滅しかけている。EVについても同様だ。中国は技術の消費国ではあっても開発・供給国ではない。それに、中国がエネルギーや食糧を外国に依存する様にしたのは米国の戦略だ。中国は米国の掌の上で踊っているにすぎない。
松尾氏の主張に従えば、日本は中国に「国内向け限定ですよ」と新幹線の技術を提供して競合相手を育てた日本の鉄道運送産業の二の舞を演じることになりそうだ。最初から約束を守る気が無く技術を盗んでやろうと構えている相手とどうやったら国益に適う関係を築けるか教えて欲しいものだ。
折しも米中貿易戦争が一段と過熱し、中国に入れ込んだ韓国経済が壊滅的打撃を受けている。韓国を見れば中国投資がどんなに危険か子供でも判る。華為も世界から孤立しつつある。米国は自由貿易世界を構成した自由、平等などの価値を守る為に、米国が構築した世界貿易の仕組みにただ乗りして世界の覇権を獲ろうとする国を許さないのだ。日本の繁栄がこの仕組みに乗ったものである以上、日本の取るべき進路は明らかだろう。日経新聞子がこれを理解しないはずがない。
日経新聞は中国の提灯持ちをいい加減止めて、どうしたら日本のエネルギー自給率を上げたり安定供給を図るかの政策を提言すべきだ。書くことはいくらでもある。
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