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KenConsultingの本多謙が政治/経済記事を独自の視点で評論します

「中国の一帯一路 多国間の協力で」とはどういうことだ?

日経新聞2019年5月18日の「Asiaを読む」欄にルーマニア・アジア太平洋研究所副所長のアンドリーア・ブリンザが「中国の一帯一路 多国間の協力で」という題で中国が一帯一路をAIIBの様な多国間の仕組みに変える案を紹介している。彼女は中国の「一帯一路」が世界の非難の的になったのは、それが中国と他国による2国間のやり取りだからであり、それを改善するには「一帯一路を多国間の形態」にすれば良いと言う。そしてそれに関する問題点をいくつか挙げ論じた後、「中国側は『一帯一路は、中国が世界に提供できる最も重要な公共財』と訴えてきた。本当かどうか証明するため、中国は一帯一路を開放し、国際社会が将来をかたちづくるのを認めるべきだ。」という文でコラムを閉じている。

これに対して日経新聞編集委員の飯野克彦氏はこの提案を支持し、中国がこの提案を採用する可能性について事例を挙げ、それが中国にとっても得になることだと述べている。

なんか怪しい、というのがこの記事を読んだ筆者の感想だ。最初の疑問は、中国の一帯一路が世界中からバッシングされ米中貿易戦争が激しさを増している現状で、なぜ小国ルーマニアの有名でもない研究所の研究者がこの提案をしたか?ということであり、次の疑問は、なぜ日経新聞がこんな無名の研究者の大して大きくもない話題を記事に載せ宣伝したか?だ。

中国は一帯一路が世界から貧乏国を債務の罠に陥れてその国を自分の思うように動かそうとしていると世界から非難されているのでその払拭に賢明になっている。だから、AIIBのビジネスモデルを一帯一路にも採用してそれを多国間の枠組みに変質させようという提案には乗るかも知れない。あるいは中国が世界からの批判をかわす為にあえてこの提案の観測気球を何らかの形で誰かに上げさせて様子を見ようと考えたのかも知れない。そこで、世界のルーマニアのマイナーな研究者に論文を書かせ、それを日経新聞の掲載させた、というシナリオが浮かび上がる。ちなみに、中国は一帯一路でEUを分断しようとしていて、ルーマニアを含む中・東欧16か国は一帯一路構想の覚書に調印している。ルーマニアは中国が約束した原子力発電所がまだ出来ていないと文句を言っているから、ちょっと中国寄りの発言をして中国の気を引きたいところかも知れない。要するに、参加国は、AIIBと同じで中国の大盤振る舞いを期待し、なお且つ自国の権益は守りたいのだ。

EUに加盟する28国  出典;https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/page22_000083.html
EUに加盟する28国  出典;https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/page22_000083.html

日経新聞は中国への投資をこれまで散々煽って来た実績がある。だから、中国が一帯一路に対する非難の嵐を逸らそうとする動きに協力するのもたやすいことだろう。だが、日経新聞の編集委員が現時点でこの提案を推すのは安易に過ぎないか?何故なら、中国が手本にしようとしているAIIBは確かに多国間の組織だが中国にしか利益にならず、日米共に参加しておらず、成功していないからだ。それに一帯一路の発想の源は唐、明時代の中国の覇権を取り戻そうとするものだから、たとえ一帯一路が多国間の枠組みを運営されようともそれは中国の利益だけの為になるだろうことは明々白々だからだ。更に、中国が一帯一路で他国に与える援助の原資は対米貿易の黒字でありそれが急速に減少しているので中国は従来の様に気前のいい旦那ではいられなくなってきている。

飯野氏は「関わっている中国の部門・機関が多いので、容易な課題ではない。共産党政権の意思統一がまず必要になる。」と訳の分からないことを言っている。共産主義政権の第一の特徴は党の一極支配で核心である習が提案していないものを誰が提案しているのだろうか?それは中国共産党の一部なのだろうか?それともトランプなのだろうか?
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