
日経新聞2019年4月23日の「Deep Insight」欄にコメンテーターの中山淳史氏が「重すぎる日本のIoT」という題で日本は中国のIoTの実験に後れを取ってはいけないと警鐘を鳴らしている。だが、同じページの下段には「欧米の大衆政策、今は団結モード」という題の英エコノミストの記事の載っていて、中国の投資に警鐘を鳴らしている。どちらの記事の方向に日本政府と企業は進むべきだろうか?
中山氏は先ず「米中摩擦の影響でヒト・モノ・カネの動きが緩慢になり、技術革新に冬の時代が訪れる」懸念を紹介して問題点を提示し、次に「米シリコンバレーと関係が深い中国南部の深圳を歩いた。率直に言えば、『冬の兆し』はあまり感じられなかった。」と中国にとって好意的な結論を述べている。だが、これむはとても中国寄りだ。
即ち「日本はインフラや工場の自動化など」の「『重いIoT』に関心が向きがちだが、身近な技術革新がより多く待ち構えるのは軽いIoTかもしれない。まずは日本企業も中国の産業基盤を試したり、創業の現場に立ち合ったりしてみる価値はある。手をこまぬいているとむしろ、機会損失がとても大きくなる可能性がある。」と、中国発のバスに乗り遅れないように煽ってコラムを閉じている。そしてその理由として「深圳、香港、マカオを合わせた「粤港澳大湾区(グレーターベイエリア)」で巨大な再開発計画が始まり、そこには米サンフランシスコ湾や日本の首都圏に匹敵する経済圏が生まれる予定であり、スタンフォード大、ジョージア工科大など米欧、香港の大学と中国の大学・企業が連携する計画が目白押し」であることを述べている。
中国は単純な加工組立て産業を脱してハイテク産業育成に注力しており、その為に日本を含む西側先進諸国からの投資と技術が欲しいのだ。中国には外貨が不足していることもある。共産党主導の国家資本主義では西側資本主義国ができないハイテクサービスが自由に大々的に試せるので欧米産業界は投資しようとしており、日本企業はこのバスに乗り遅れると損しますよ、というのが中山氏の主張だ。
だが、中山氏は過去に日本企業がどれ程中国に投資しどれ程の利潤を日本に持ち帰れたかご存知だろうか?ゼロだ。なぜなら中国とは資本取引ができないからだ。また、何人の日本人企業人が中国国内で足止めをくらって帰れなくなったかをご存知だろうか?欧米企業はこれらのリスクを考えて中国の甘い罠に対し警戒モードだというThe Economistの記事が日経新聞の同じページの下段に掲載してあるのは皮肉だ。
Economist子は、数年前まで北京の外交官の間では「自国が中国といかに仲がいいかという自慢話を発言の間に滑り込ませていたものだ。中国は扱いにくいとぼやいてみせる」傾向が「影を潜めるように」なり、中国に好意的な「16プラス1」の国々は「中国から期待したほどの商機や投資を実現できないこの枠組みに次第にうんざりし、不満を高めて」おり、中国が「参加国を借金漬けにし、環境を破壊し、アフリカやアジア、アジア太平洋の多くに中国の基準を導入することで他国の参入をできなくしてしまう」ことを懸念し、「中国当局は新疆の再教育キャンプに数十万人に上るイスラム教徒の少数民族ウイグル族を収容し、さらに数百万人を厳しい監視下に置いているとして非難を浴びている。」と述べている。この為西側諸国は天安門事件の後“ゆるく”団結したように今は反中国で団結モードだ、というのだ。
これを読むと西側先進諸国が「粤港澳大湾区(グレーターベイエリア)」に投資しようという雰囲気だとはとても思えない。中山氏は中国お薦め記事を書くならリスク要因にも留意して書いて欲しいと思う。
中国の西側社会に対するメッセージは「
(1)中国の台頭は避けられない
(2)中国に協力する国は多大な恩恵を受けられる
(3)従って抵抗しても無駄だ、」
という力で押さえつけるものだ。この強権的姿勢が中国に対する警戒感を持たせることになっただろう。そうした中国の対外活動の原資が米中貿易からの巨大な黒字だったが、これは米中貿易摩擦で急激に減少しつつある。
米国の圧力に不満な日本の指導者たちは中国に肩入れし中国への投資を扇動する者も多いが、だからといって親中国路線が反米国以上のものを日本にもたらすのだろうか。それは一帯一路を受け入れた国々の現状を見れば明らかだ。彼らは日本をチベットやウイグルや旧満州国の様にしたいのだろうか?
米国と中国は世界の覇権を巡って対立しているが、この対立はそれ以上に自由や平等などの価値観の争いだ。経済活動はそれを支える思想が背後にあってこそ成り立つ。
日本はどっちにも良い顔を見せようとしている。且つて天安門事件後、西側先進諸国は団結して中国を経済封鎖したが、その団結を崩すきっかけを作ったのは日本の天皇の訪中だった。日本は中国を救ったのだが、その結果中国は日本の領土を侵害しようとし、米国を凌いで世界の覇権を握り、中国の独裁政治、国家資本主義を世界に押し付けようとしている。日本は中国に利用されたのだ。日本はこの二の舞をしてはならない。
中山氏は先ず「米中摩擦の影響でヒト・モノ・カネの動きが緩慢になり、技術革新に冬の時代が訪れる」懸念を紹介して問題点を提示し、次に「米シリコンバレーと関係が深い中国南部の深圳を歩いた。率直に言えば、『冬の兆し』はあまり感じられなかった。」と中国にとって好意的な結論を述べている。だが、これむはとても中国寄りだ。
即ち「日本はインフラや工場の自動化など」の「『重いIoT』に関心が向きがちだが、身近な技術革新がより多く待ち構えるのは軽いIoTかもしれない。まずは日本企業も中国の産業基盤を試したり、創業の現場に立ち合ったりしてみる価値はある。手をこまぬいているとむしろ、機会損失がとても大きくなる可能性がある。」と、中国発のバスに乗り遅れないように煽ってコラムを閉じている。そしてその理由として「深圳、香港、マカオを合わせた「粤港澳大湾区(グレーターベイエリア)」で巨大な再開発計画が始まり、そこには米サンフランシスコ湾や日本の首都圏に匹敵する経済圏が生まれる予定であり、スタンフォード大、ジョージア工科大など米欧、香港の大学と中国の大学・企業が連携する計画が目白押し」であることを述べている。
中国は単純な加工組立て産業を脱してハイテク産業育成に注力しており、その為に日本を含む西側先進諸国からの投資と技術が欲しいのだ。中国には外貨が不足していることもある。共産党主導の国家資本主義では西側資本主義国ができないハイテクサービスが自由に大々的に試せるので欧米産業界は投資しようとしており、日本企業はこのバスに乗り遅れると損しますよ、というのが中山氏の主張だ。
だが、中山氏は過去に日本企業がどれ程中国に投資しどれ程の利潤を日本に持ち帰れたかご存知だろうか?ゼロだ。なぜなら中国とは資本取引ができないからだ。また、何人の日本人企業人が中国国内で足止めをくらって帰れなくなったかをご存知だろうか?欧米企業はこれらのリスクを考えて中国の甘い罠に対し警戒モードだというThe Economistの記事が日経新聞の同じページの下段に掲載してあるのは皮肉だ。
Economist子は、数年前まで北京の外交官の間では「自国が中国といかに仲がいいかという自慢話を発言の間に滑り込ませていたものだ。中国は扱いにくいとぼやいてみせる」傾向が「影を潜めるように」なり、中国に好意的な「16プラス1」の国々は「中国から期待したほどの商機や投資を実現できないこの枠組みに次第にうんざりし、不満を高めて」おり、中国が「参加国を借金漬けにし、環境を破壊し、アフリカやアジア、アジア太平洋の多くに中国の基準を導入することで他国の参入をできなくしてしまう」ことを懸念し、「中国当局は新疆の再教育キャンプに数十万人に上るイスラム教徒の少数民族ウイグル族を収容し、さらに数百万人を厳しい監視下に置いているとして非難を浴びている。」と述べている。この為西側諸国は天安門事件の後“ゆるく”団結したように今は反中国で団結モードだ、というのだ。
これを読むと西側先進諸国が「粤港澳大湾区(グレーターベイエリア)」に投資しようという雰囲気だとはとても思えない。中山氏は中国お薦め記事を書くならリスク要因にも留意して書いて欲しいと思う。
中国の西側社会に対するメッセージは「
(1)中国の台頭は避けられない
(2)中国に協力する国は多大な恩恵を受けられる
(3)従って抵抗しても無駄だ、」
という力で押さえつけるものだ。この強権的姿勢が中国に対する警戒感を持たせることになっただろう。そうした中国の対外活動の原資が米中貿易からの巨大な黒字だったが、これは米中貿易摩擦で急激に減少しつつある。
米国の圧力に不満な日本の指導者たちは中国に肩入れし中国への投資を扇動する者も多いが、だからといって親中国路線が反米国以上のものを日本にもたらすのだろうか。それは一帯一路を受け入れた国々の現状を見れば明らかだ。彼らは日本をチベットやウイグルや旧満州国の様にしたいのだろうか?
米国と中国は世界の覇権を巡って対立しているが、この対立はそれ以上に自由や平等などの価値観の争いだ。経済活動はそれを支える思想が背後にあってこそ成り立つ。
日本はどっちにも良い顔を見せようとしている。且つて天安門事件後、西側先進諸国は団結して中国を経済封鎖したが、その団結を崩すきっかけを作ったのは日本の天皇の訪中だった。日本は中国を救ったのだが、その結果中国は日本の領土を侵害しようとし、米国を凌いで世界の覇権を握り、中国の独裁政治、国家資本主義を世界に押し付けようとしている。日本は中国に利用されたのだ。日本はこの二の舞をしてはならない。
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