
何か頼りない日本の経済学者たち
気鋭の経済学者4人が「揺らぐ資本主義、経済学をどう生かすか」についての議論が2018年8月6日の日経新聞に載っている。これは日本経済新聞の「経済教室」欄が始まって70年になるのを記念したものだ。筆者は高校生の時から50年以上日経新聞を購読し、「経済教室」も良く読んできたのでこの議論に興味を持った。以下感想を述べたい。なお、出席者は慶応義塾大学の小林慶一郎教授、慶応義塾大学の鶴光太郎教授、東京大学の柳川範之教授、京都大学の若林直樹教授だ。
もとより、経済学は自然科学の大成功に触発されてその手法を経済に応用して始まったのだが、自然科学の様に実験室で同一の条件で実験を繰り返し、その結果を統計的優位性で評価するという訳にはゆかない。様々なモデルを作ってもそれを実社会の経済現象にどこまで適用できるかは条件付きだ。
だがしかし、日本の経済学者は戦後、傾斜生産方式という政策を掲げ、それを政府が実行して日本を再興させたという実績を持つ。だから、柳川氏が「中長期的な経済の方向性を示すという要請に、今の経済学は応えられていない。政治を含めた大きな仕組みを論じるモデルがないことが経済学の限界といえる。」と言うのはいささか不満だ。政治には人間の情念とか敵国からの工作活動とかが入り込むから、従来のモデリングの方法論では難しいかも知れないが、AIを組み込んだら少しは何とかなるかも知れない。
鶴氏 「(中略)日本はバブル崩壊からデフレや少子高齢化まで世界に共通する課題を先取りして経験している。海外の経済学者はそれらに応えてくれないので、日本の学者が取り組まないといけない。」には期待したい。このモデル化に成功すれば日本のコンサルタント会社が世界各国の政府や投資機関に高額のコンサルを提供できる。「『豊かになる前に老いてしまう』と悩んでいるのは中国だけではない。
鶴氏 「正社員の終身雇用を土台とする日本の雇用システムは維持できなくなった。(中略)『同一労働同一賃金』は方向性としては正しいが、40%近くまで高まった非正規の比率を20%程度に下げないと雇用システムは安定しないだろう。」については少々注文がある。「同一労働同一賃金」は社会主義の思想であって資本主義の思想ではない。効率的な経営をすれば同一の労働をしてもより高い賃金が得られるのが資本主義だ。利潤を適正に配分するなら問題ない。「非正規雇用の比率を20%まで下げないと雇用システムは安定しない」というのも社会主義の考えだ。この考えでは日本は世界の変化に乗り遅れる。企業は、無能な者はすぐ解雇して、市場や技術の変化に対応すべくそれなりの能力を持った者を直ぐ雇い入れなければ潰れてしまう。米国企業はこれが出来たから企業のビジネスモデルを素早く変革し世界をリードして来たのだ。例えばDELLを見よ。DELLはPCの事業モデルが市場に合わなくなったら株式を非公開にしてビジネスモデルを組み替え、求める能力に相応しい人を採用して新規事業を起こし、再び株式を公開した。日本PCメーカにこんな大胆な変身ができた企業は無い。
小林氏 「(中略)プログラミングなどのITスキルを教育の初期段階から幅広く導入することで、普通の人が技術に対応できるようにすべきだ。」これは今さらこんな事を言うか、だ。せめて20年前にこれを言って欲しかった。
小林氏 「自由な市場経済が民主主義を脅かす事態も生じている。資本主義の成果でもあるITを悪用すれば、選挙結果も操作できる。中国のように民主主義を制限したほうが、資本主義が強くなるという現象も起きている。」これは明らかな認識間違い。白髪三千丈式の中国からの統計数字しか見ていないからこんな事を言うのだろう。株式を売ろうとしたら警察がやって来て逮捕されるような国が資本主義国でないのは明らかだ。中国は資本主義の仕組みは採り入れたが人々の思考回路は清朝の時代と変わらない。だから中国で資本主義が強くなっているというのは間違い。それに、ITは資本主義の成果ではない。戦争の成果だ。ITが無くても民主主義は脅かされる。ナチス・ドイツが正規の民主主義の手続きの結果誕生したことを思い出すべきだ。
この様な認識間違いをするから司会者の「米トランプ政権が保護貿易に走るなど、資本主義が揺さぶられています。」などという頓珍漢な質問になる。揺さぶられているのは資本主義ではなく、グローバリズムであり、トランプのせいで不安になっているのは戦後グローバリズムを推進し世界経済の枠組みを作って来たネオコンなどのグローバリストたちであり、グローバリストたちのけいぁ医学を信奉して来た日本のエリートたちなのだ。
資料;https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180806&c=DM1&ng=DGKKZO3376912003082018M11200
気鋭の経済学者4人が「揺らぐ資本主義、経済学をどう生かすか」についての議論が2018年8月6日の日経新聞に載っている。これは日本経済新聞の「経済教室」欄が始まって70年になるのを記念したものだ。筆者は高校生の時から50年以上日経新聞を購読し、「経済教室」も良く読んできたのでこの議論に興味を持った。以下感想を述べたい。なお、出席者は慶応義塾大学の小林慶一郎教授、慶応義塾大学の鶴光太郎教授、東京大学の柳川範之教授、京都大学の若林直樹教授だ。
もとより、経済学は自然科学の大成功に触発されてその手法を経済に応用して始まったのだが、自然科学の様に実験室で同一の条件で実験を繰り返し、その結果を統計的優位性で評価するという訳にはゆかない。様々なモデルを作ってもそれを実社会の経済現象にどこまで適用できるかは条件付きだ。
だがしかし、日本の経済学者は戦後、傾斜生産方式という政策を掲げ、それを政府が実行して日本を再興させたという実績を持つ。だから、柳川氏が「中長期的な経済の方向性を示すという要請に、今の経済学は応えられていない。政治を含めた大きな仕組みを論じるモデルがないことが経済学の限界といえる。」と言うのはいささか不満だ。政治には人間の情念とか敵国からの工作活動とかが入り込むから、従来のモデリングの方法論では難しいかも知れないが、AIを組み込んだら少しは何とかなるかも知れない。
鶴氏 「(中略)日本はバブル崩壊からデフレや少子高齢化まで世界に共通する課題を先取りして経験している。海外の経済学者はそれらに応えてくれないので、日本の学者が取り組まないといけない。」には期待したい。このモデル化に成功すれば日本のコンサルタント会社が世界各国の政府や投資機関に高額のコンサルを提供できる。「『豊かになる前に老いてしまう』と悩んでいるのは中国だけではない。
鶴氏 「正社員の終身雇用を土台とする日本の雇用システムは維持できなくなった。(中略)『同一労働同一賃金』は方向性としては正しいが、40%近くまで高まった非正規の比率を20%程度に下げないと雇用システムは安定しないだろう。」については少々注文がある。「同一労働同一賃金」は社会主義の思想であって資本主義の思想ではない。効率的な経営をすれば同一の労働をしてもより高い賃金が得られるのが資本主義だ。利潤を適正に配分するなら問題ない。「非正規雇用の比率を20%まで下げないと雇用システムは安定しない」というのも社会主義の考えだ。この考えでは日本は世界の変化に乗り遅れる。企業は、無能な者はすぐ解雇して、市場や技術の変化に対応すべくそれなりの能力を持った者を直ぐ雇い入れなければ潰れてしまう。米国企業はこれが出来たから企業のビジネスモデルを素早く変革し世界をリードして来たのだ。例えばDELLを見よ。DELLはPCの事業モデルが市場に合わなくなったら株式を非公開にしてビジネスモデルを組み替え、求める能力に相応しい人を採用して新規事業を起こし、再び株式を公開した。日本PCメーカにこんな大胆な変身ができた企業は無い。
小林氏 「(中略)プログラミングなどのITスキルを教育の初期段階から幅広く導入することで、普通の人が技術に対応できるようにすべきだ。」これは今さらこんな事を言うか、だ。せめて20年前にこれを言って欲しかった。
小林氏 「自由な市場経済が民主主義を脅かす事態も生じている。資本主義の成果でもあるITを悪用すれば、選挙結果も操作できる。中国のように民主主義を制限したほうが、資本主義が強くなるという現象も起きている。」これは明らかな認識間違い。白髪三千丈式の中国からの統計数字しか見ていないからこんな事を言うのだろう。株式を売ろうとしたら警察がやって来て逮捕されるような国が資本主義国でないのは明らかだ。中国は資本主義の仕組みは採り入れたが人々の思考回路は清朝の時代と変わらない。だから中国で資本主義が強くなっているというのは間違い。それに、ITは資本主義の成果ではない。戦争の成果だ。ITが無くても民主主義は脅かされる。ナチス・ドイツが正規の民主主義の手続きの結果誕生したことを思い出すべきだ。
この様な認識間違いをするから司会者の「米トランプ政権が保護貿易に走るなど、資本主義が揺さぶられています。」などという頓珍漢な質問になる。揺さぶられているのは資本主義ではなく、グローバリズムであり、トランプのせいで不安になっているのは戦後グローバリズムを推進し世界経済の枠組みを作って来たネオコンなどのグローバリストたちであり、グローバリストたちのけいぁ医学を信奉して来た日本のエリートたちなのだ。
資料;https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180806&c=DM1&ng=DGKKZO3376912003082018M11200
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