
日本は戦後、米国が放棄した城を占領しただけなのだ。
ウォール街の盟主であるゴールドマン・サックスのCEOロイド・ブランクファイン氏が今年9月末に退任しデービッド・ソロモン氏に替わる。2006年の就任以来の「ブランクファイン氏の12年間」を振り返り、日経新聞社コメンテーターの梶原誠氏が「ゴールドマンの資本主義」という題で辛口の評論を2018年8月3日のDeep Insight欄に載せている。
梶原氏はこの「12年間」が「金融が幅をきかせるようになった米国型の資本主義が、社会の反撃を受けて持続不能になった時代だ」と総括する。確かに、「企業が金融の束縛を離れて『自己拡大』する」1950年代の「理想郷」は既に無く、「格差を生んだエゴ丸出しな経営者への怒りは後に噴出し、トランプ氏が16年の大統領選を制する底流をなした」。だが、金融が産業の血液であることには変わりなく、ゴールドマンの新CEOが「担う役割は、経済の持続的な成長を促す金融と経済の関係を再構築することにほかならない。」と言う。
こうした認識は梶原氏だけのものではない。トランプ大統領は海外に移転した製造業を国内に取り戻そうとし、中国などと関税戦争を仕掛けている。その帰趨は先端技術を誰が持っているかで決まる。収奪を旨とする馬賊文化の中国は日欧米の技術にただ乗りしているだけなので、中国に勝ち目は無い。
だが、この戦争は米国にとって何年もかかるだろう。なぜなら、一旦失った技術を取り戻すには教育システムを刷新し、就労者を再教育しなければならないからだ。だが米国はこれを達成するだろう。それは、「ビジネススクールの就職先は将来の産業構造を占う鏡だが、マサチューセッツ工科大(MIT)の場合、10年で金融と主従が入れ替わった」という変化から分かる。
「危機の傷痕が残る今」、かつてGMのCEOが言った様に「「ゴールドマンにとっていいことは米国にもいい」と新CEOが言えるかどうか、「多くの金融機関は」「資本主義の黒子として、米国民に報いることができるだろうか」と梶原氏は評論を終えている。
米国の金融の時代は終わったと認めるべきだろう。MITのビジネススクール卒業生の30%がITに就職するのに対して金融は10%に過ぎないことは、米国が金融の限界と弊害を認め、富と力の源泉をITに置き換えようとしている証拠だ。
だが、この様な傾向は今に始まったことではない。かつて日本が自動車輸出で米国と揉めていた1980年代、米国自動車メーカの経営者が「最近は優秀な卒業生は皆ITに行って自動車には来ない」と劣勢を嘆いていた。日本の自動車産業の隆盛は米国産業の主体が自動車産業からITに移行した為であり、日本の家電産業の隆盛も同様だ。繊維も鉄鋼もそうだ。日本は米国が放棄した城を占領しただけなのだ。であれば、日本のIT産業の現状も理解できる。GoogleやAmazonなどが日本を含む世界を席巻していて日本のIT産業の劣勢は明らかだ。
だが、自動車がIT技術の塊でありそれがネットの端末になるという変革が進行している今、自動車を含むIT産業で日本はどうすべきだろうか?トランプが中国に関税戦争を仕掛けたのは中国が5GなどのハイテクIT技術で米国を凌駕し米国の軍事産業の優位性を脅かそうとしたからでもある。米国が明け渡した産業と市場を捨てず、米国とうまく折り合いをつけてIT産業構造の核となる部分を占め、相互依存関係を深める様にすべきだろう。
米国国債の最大の所有者であり、米国が必要とする技術を持つ日本は、実は米国にとって中国以上に恐るべき相手になる可能性を秘めていることを忘れてはなるまい。

資料;https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180803&ng=DGKKZO33726800S8A800C1TCR000
ウォール街の盟主であるゴールドマン・サックスのCEOロイド・ブランクファイン氏が今年9月末に退任しデービッド・ソロモン氏に替わる。2006年の就任以来の「ブランクファイン氏の12年間」を振り返り、日経新聞社コメンテーターの梶原誠氏が「ゴールドマンの資本主義」という題で辛口の評論を2018年8月3日のDeep Insight欄に載せている。
梶原氏はこの「12年間」が「金融が幅をきかせるようになった米国型の資本主義が、社会の反撃を受けて持続不能になった時代だ」と総括する。確かに、「企業が金融の束縛を離れて『自己拡大』する」1950年代の「理想郷」は既に無く、「格差を生んだエゴ丸出しな経営者への怒りは後に噴出し、トランプ氏が16年の大統領選を制する底流をなした」。だが、金融が産業の血液であることには変わりなく、ゴールドマンの新CEOが「担う役割は、経済の持続的な成長を促す金融と経済の関係を再構築することにほかならない。」と言う。
こうした認識は梶原氏だけのものではない。トランプ大統領は海外に移転した製造業を国内に取り戻そうとし、中国などと関税戦争を仕掛けている。その帰趨は先端技術を誰が持っているかで決まる。収奪を旨とする馬賊文化の中国は日欧米の技術にただ乗りしているだけなので、中国に勝ち目は無い。
だが、この戦争は米国にとって何年もかかるだろう。なぜなら、一旦失った技術を取り戻すには教育システムを刷新し、就労者を再教育しなければならないからだ。だが米国はこれを達成するだろう。それは、「ビジネススクールの就職先は将来の産業構造を占う鏡だが、マサチューセッツ工科大(MIT)の場合、10年で金融と主従が入れ替わった」という変化から分かる。
「危機の傷痕が残る今」、かつてGMのCEOが言った様に「「ゴールドマンにとっていいことは米国にもいい」と新CEOが言えるかどうか、「多くの金融機関は」「資本主義の黒子として、米国民に報いることができるだろうか」と梶原氏は評論を終えている。
米国の金融の時代は終わったと認めるべきだろう。MITのビジネススクール卒業生の30%がITに就職するのに対して金融は10%に過ぎないことは、米国が金融の限界と弊害を認め、富と力の源泉をITに置き換えようとしている証拠だ。
だが、この様な傾向は今に始まったことではない。かつて日本が自動車輸出で米国と揉めていた1980年代、米国自動車メーカの経営者が「最近は優秀な卒業生は皆ITに行って自動車には来ない」と劣勢を嘆いていた。日本の自動車産業の隆盛は米国産業の主体が自動車産業からITに移行した為であり、日本の家電産業の隆盛も同様だ。繊維も鉄鋼もそうだ。日本は米国が放棄した城を占領しただけなのだ。であれば、日本のIT産業の現状も理解できる。GoogleやAmazonなどが日本を含む世界を席巻していて日本のIT産業の劣勢は明らかだ。
だが、自動車がIT技術の塊でありそれがネットの端末になるという変革が進行している今、自動車を含むIT産業で日本はどうすべきだろうか?トランプが中国に関税戦争を仕掛けたのは中国が5GなどのハイテクIT技術で米国を凌駕し米国の軍事産業の優位性を脅かそうとしたからでもある。米国が明け渡した産業と市場を捨てず、米国とうまく折り合いをつけてIT産業構造の核となる部分を占め、相互依存関係を深める様にすべきだろう。
米国国債の最大の所有者であり、米国が必要とする技術を持つ日本は、実は米国にとって中国以上に恐るべき相手になる可能性を秘めていることを忘れてはなるまい。

資料;https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180803&ng=DGKKZO33726800S8A800C1TCR000
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