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KenConsultingの本多謙が政治/経済記事を独自の視点で評論します

トランプ氏、貿易戦争招く

日本は状況を冷静に分析し、有利に立ち回る

「トランプ氏、貿易戦争招く」というコラムが日経新聞2018年7月12日のFINANCIAL TIMES欄に載った。著者は同欄でおなじみのFinancial Times Chief Economic Commentatorの英国人 Martin Wolf氏だ。Wolf氏のヒステリックな反トランプぶりにはそろそろ慣れが来ていて、一流経済紙に載るコメントテータなんてこんな程度なのかという思いがしてくる。また、かなり中国に洗脳されているなというのが文章の端々から感じられる。このコラムはこんな視線で読むと楽しめる。

先ず「今、世界一の大国を率いているのは危険な無学者だ。」とトランプをこき下ろしている。トランプは欧州流の洗練された身のこなしや英国流の皮肉やオバマの様な学歴は無いが、実業の世界で勝ち抜いてきた知恵者であり、アメリカ人のカウボーイ好みに合ったイケメンなのだ。それに有能なシンクタンクが支援している。「トランプ氏やトランプ政権が何を望んでいるのか誰にも分からないため、交渉するのが極めて難しい。」というのも間違い。トランプは大統領選挙の公約を粛々と実行しているだけだ。さすがに、ワシントンは敵ばかりなので順調な人事ばかりとは言えないし、余計なスパイを大統領府に入れる愚は避けたいだろう。

コラム子はトランプが貿易戦争を招くことを恐れ、非難し、戦争の帰趨に対して悲観的であり、その論旨は中国を代弁しているのではないかと思わせる。そもそも、トランプが中国に貿易戦争を仕掛けたのは中国を今のうちに叩いて中国を米国に替わる世界の覇権国ではなく、米国の大人しい市場にしようとしたからだ。

米国はニクソン以来そのつもりで中国に技術と資本を与えたが、習近平の中国はAIIBや一帯一路で米国を凌ぐ世界の覇権国になろうとする姿勢を露わにした。一方民主党政権は米国を売って私腹を肥やした。米国の指導者たちは、これは失敗したと思ってトランプにその是正を期待しているだけなのだ。勿論、米国との貿易戦争は中国にとって不利であり、勝ち目が無く、中国は条件闘争にせざるを得ないのだが、その為には国際世論を味方につけなければならない。そこでウルフ氏のような著名なコメンテータが一流経済新聞の紙面をにぎわすことになるのだろう。

コラム子は言う。「米政権が貿易に関して発動した措置や発表内容は」「トランプ政権がいかに無能かをさらけ出してもいる。」なぜなら追加関税の対象は「米国の年間輸入総額の約3分の1に相当する。そのため米国の動きは早くも報復の応酬を招きつつある」のであり、これはWTOルール違反であり、「中国に貿易赤字削減を求めるのはばかげているし、次の産業育成策阻止は交渉できる類いのものではない。最後の強制的技術移転阻止は道理にかなった要求だが、達成は難しい。」と中国を擁護している。中国が薄利の加工&組立てビジネスから利幅の大きいハイテクビジネスに移行しようとしているのは明白だし、その政策が実現すれば米国は防衛産業での主導権を失い、世界に展開している米国軍の価値は激減し、中国と戦争すれば敗退を重ねることになるだろう。そうなった場合英国も米国も日本もチベットの様になってしまうのだが、コラム子はそれを容認するのだろうか?チベットでは絶望した仏僧たちが焼身自殺を続けているというのに。

コラム子は「トランプ氏が実際にしているのは、2歳児のように明確な目的もないまま既存の仕組みを壊しているだけだ。中国と関係を修正したければ、(中略)各国と力強く連携し、中国に立ち向かったはずだ。」とトランプを非難しているが、米国が構築した世界貿易の「既存の仕組み」をもっとも 狡猾に利用して米国を恫喝し始めたのは中国であり、その他の「各国」は程度の差こそあれ中国と同様狡猾に米国を利用して来たのだ。だから、「各国と力強く連携」するなんて無意味だし、トランプが「明確な目的もないまま既存の仕組みを壊して」いると言うのは間違いだ。それは米国の想定内なのだと理解すべきだろう。

コラム子の、中国が保護主義により米国市場から「締め出されると、その輸出先が他国へと移っていくからだ。例えば中国から米国に輸出されていたモノが欧州連合(EU)市場に出回るようになると、今度はEUが自国製品を輸入品から守る必要を感じるようになるかもしれない。」との懸念は、彼が中国の立場に立っているなら全く納得できる。中国の製品が世界から締め出されるからだ。それは米国が狙っていたことではないのか?

中国が生き延びる道はかって日本の自動車メーカが米国でしたように自国の工場を米国に移し、米国人を雇って米国のGNPを増やすことだろう。だが、それが出来る企業が中国にどれ程あるのか?例えばアップルは中国の工場を閉鎖して米国に工場を移せばよく、中国はそれに対して儚い抵抗をするしかないだろう。ZTEは米国や日本から部品を買って組立てているだけだ。

コラム子はトランプへの対応として「報復だけがトランプ氏の路線を変えることができるかもしれない。」と言い、「筆者なら報復する。それは報復に効果があるからではなく、報復しないと弱く見えてしまうからだ。」と述べている。これは米国に対する中国のリアクションそのものだ。コラム子の頭はかなり中国化されている様に見える。

コラム子は「高所得国が打てる最も大胆な策は」「トランプ氏が提案する関税ゼロの貿易をすることだ。」「そんな世界もあるのかもしれない。」と述べている。コラム子がどの国をこの「高所得国」として想定しているのかは分からないが、日本がそれに当たることは間違い無い。日本は既にTPPを発足させ、EUとの関税撤廃の条約も締結した。コラム子は「そんな世界もあるのかもしれない。」と言うが日本は既にそんな国になっているのだ。

だが、日本は米国と対立している訳ではない。米国が「中国の対米貿易黒字の削減」、「中国のハイテク産業育成策『中国製造2025』の阻止、「強制的な技術移転の阻止」を達成すればそれは日本の利益にもなる。従来通り米国の良きパートナーとしての立場を堅持していれば良い。

更に、蒋介石夫人やノーベル賞作家パール・バック以来米国には中国に対する美しい幻想が定着している様だ。日本も古代中国に対して似たようなものだが、中世以来の中国人像のおぞましさについて日本人はより深く認識しそれを世界に広めなければなるまい。


資料;https://www.nikkei.com/paper/article/?b=20180712&ng=DGKKZO32866400R10C18A7TCR000 
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