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KenConsultingの本多謙が政治/経済記事を独自の視点で評論します

AIは人を幸せにするか

クラウス・シュワブ氏は日本にとって危険人物か?

世界経済フォーラム会長のクラウス・シュワブ会長との「AIは人を幸せにするか」という題のインタビューが2018年5月8日の日本経済新聞に載った。筆者はかって日本でAIソフトビジネスを立ち上げたことがあるので興味深く読んだ。シュワブ氏は「ダボス会議」を主催する、世界経済の方向性を考える上で不可欠な人だ。
インタビュー記事からシュワブ氏を探ってみたい。

スイスの大学の博士号を持つにすぎないシュワブ氏がなぜダボスというスイスの寒村に世界中の指導者を集め世界の問題を話し合うようにできたか?それはスイスが永世中立国となり多くの国際機関の本部がスイスにあるのか?という疑問につながる。世界決済銀行の本部もスイスにある。スイスはロスチャイルド家などの欧州の影の指導層が国家間の紛争を調整する場として作った人造国家なのだ。だからシュワブ氏はドイツ出身でありながらスイスに住み、一介の博士号取得者でありながらこの影の指導者層の信任を得た指導者として国際会議を主催できているのだ。国際社会という枠組みは欧州で発生しそれが全世界に拡大した。国際社会を一つの論理で統一的に把握し導こうという彼らの指向性はかつて共産主義を生み育てたが、これは失敗した。この指向性は彼の話しの節々に出てくる。シュワブ氏と世界経済フォーラムはこの様な性質の団体だということは覚えておいた方が良い。

彼はICT革命に続く第四次産業革命を提唱し、「第4次産業革命センター」を米サンフランシスコに設立し2つ目のセンターを日本に作ろうとしている。このセンターの目的は「技術に限らず社会、政治にも及ぶ」産業革命がもたらす「有難くない結果を避けられる制度、規制を分析し、世界に提案」することにある。今後日本政府や産業界は同センターからの働きかけに対応する面倒な作業に振り回されることになるだろう。そういう意味でも、このインタビュー記事はより多くの人が読むべきだ。

シュワブ氏による産業革命の区分は割とユニークで、『地球は宇宙の中心ではない』ことを知り、科学に目覚め(第1次)、『人間は生物学的進化の一部である』ことを発見し(第2次)、「我々の意思決定が意識的ではなく、無意識に大きく影響されている」ことを理解し(第3次)、人工知能によって「コンピュータの方が人類より優れたアルゴリズムを作り出すことを眼の当たりにした(第4次)という西洋人らしいものだ。彼は無意識界を深く思惟していた東洋思想には詳しくない様だ。それは「世界が共に生きていく方法。その優れた模範として孔子の教えに学ぶことが多いと考えている。」という言葉からも分かる。これは支配体制維持の為の理論だった儒教に対する買い被りか誤解だ。儒教の為に中国は停滞し西洋の攻勢により没落した。氏はむしろ徳川300年の平和と繁栄をもたらした日本の文化に学ぶべきだろう。日本の歴史家は彼に、徳川の平和が1万年以上前の縄文文化や大和朝廷が覇権を獲るまでの動乱の歴史に依ることを教えなくてはならない。彼は中国に洗脳されている匂いがする。

彼の言で見逃せないのは「プラットフォーム経済というものが確立した以上、それを作り上げた企業には競争戦略の必要性が減る。あとは立法者たちの仕事だ。プラットフォーム経済を定着させ、経済の競争力をどう保つかを考えることだ」だ。これを読んでAMAZONやGoogleやフェイスブックなどのプラットフォーム産業がなぜ世界制覇したかが分かった。シュワブ氏らの戦略に同調する投資家が、例えばAMAZONが成功するまで10数年も忍耐強く投資を続けたのだ。日本のIT指導者たちはこの戦略に気付かず、プラットフォーム経済では完全に後れを取った。中国の阿里巴巴の成功もWall Streetが支援したからだ。プラットフォームサービス上に成立したICT産業はそのサービス事業者の掌の上でしか踊ることができない。シュワブ氏らは海外のプラットフォーム事業者のビジネスが有利になる法律をこれから色々と日本政府に要求してくるに違いない。日本はそれに対抗する戦略が必要だ。

中国との経済摩擦に関して氏は「単なる貿易戦争ではなく、第4次産業革命における覇権が絡んだ攻防だろう」と言っている。これは中国を買い被り過ぎだろう。中国は本質的に詐術と体面の国だ。第3次産業革命を成立させた科学技術を外国から借りて来て製造業を興しGDPを世界第2位にしたのに酔って海外に覇権を求めたに過ぎない。中国は早まったのだ。

日経新聞の中山敦史氏は「聞き手から」の欄で、ルネサンスで「大きかったのは人間の価値判断基準が『啓示』から『観察』に移っていったことだろう」と述べ、更に「第四次産業革命を象徴する言葉とは何か。『解析』だろう。」と述べている。ビジネスでも学問でも「啓示」が大手を振っている分野がまだまだ多い。この言葉は何度も折に触れ多くの事象に適用してみるべきだろう。

資料;https://www.nikkei.com/article/DGXKZO30169230X00C18A5TCR000/
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