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KenConsultingの本多謙が政治/経済記事を独自の視点で評論します

「ファーウェイ問題」とはそもそも何なのか?

「ファーウェイ 衝突する『正義』」と題して日経新聞本社コメンテーターの中山淳史氏が、ファーウェイ問題は中国と米国の正義のすれ違いなのだから 「サイバー空間の安全性を確保する技術を米中で模索する」べきだと2019年5月25日のDeep Insight欄で述べている。

中山氏はファーウェイが、米国との衝突を避けるために米国社の傘下に入ろうとさえしたが失敗したこと、そのCEOが「国際法と各国の法規を守り、レッドライン(一線)を絶対に越えない」様にしていると言っていることを紹介している。更に「米欧各国が同社と中国政府の関係について様々な報告書を公表しているが、『政府・共産党の会社』と言い切るだけの確証はない。」とも述べ、そもそもF社が従業員の持ち株会社で民主的な会社だと言い、F社が、聞き分けの良いヨイ子なのに「米中貿易摩擦のとばっちり」を受けて困っているという印象を読者に植え付けようとしている。

だが、それは正しいのか?例えば5Gの特許取得数はF社が最も多く、F社が5Gで世界のイニシアティブを獲ろうとしていることが分かる。これは「よゐ子」のすることではない。その特許もほとんどが周辺特許で、核になるものはないと聞く。

HuaWei実績


そもそもファーウェイ(以下F社と呼ぶ)というのはどういう会社なのか?ファーウェイは“華為”と書く。“華為”は創業者の任正非氏が「中華の為に」という意味を込めて命名した会社だが、そこには中国の覇権を世界に広めようという意図を込めたものだ。任氏は人民解放軍出身であり、中国共産党の強力な支援を基に急成長した。中山氏はF社が従業員の意思で経営されている様に言うが、それは間違いだ。中国が共産主義国であることを忘れてはならない。中国の企業にはその中に共産党の支部を置くことが義務付けられており、共産党の指導に従わなければならない。主な経営者も従業員も共産党員であり、彼らは党中央の指示に従わなければならない。今日中国で成功している企業は皆中国共産党配下の企業だ。中山氏はこんなことも知らないはずはあるまいが。

中山氏は任氏を「どこにでもいそうな創業経営者」だというが、彼の実娘はF社の副会長を務め、昨年12月にカナダの空港で逮捕された時7つのパスポートを持っていたという。中国政府の“強力な”支援が無ければこの様なことは不可能だし、その支援はF社が中国共産党に仕えていたからこそ得られたと考えるのが自然だ。F社の急成長の要素は2つある。1つは共産党からの大規模な財政・要員・市場の支援であり。2つ目は中国政府の世界のネットワークを活かした、世界から、主に米国からの技術情報の窃取だ。これは鄧小平時代以来のものだ。日本もその対象でないはずがない。

知的資産に対して正当な対価を支払わなければ、そして膨大な研究費を支払わないでその成果だけを享受できるなら、正直な国や企業はたまったものではない。米国の主要な研究機関や大学は既に中国系研究者を締め出している。日本はどうか?更に恐ろしいことは、ジョージ・オーウエルの「1984年」も真っ青の監視システムをF社が構築してチベットやウイグルなどの国民一人一人を精細に監視し、そのシステムが外国に販売されていることだ。つまり我々が持っている人間や生命の尊厳についての認識がまるで違う非人道的な監視システムが世界に広められようとしているのだ。

更に、言論に対する認識も中国は異質だ。日本人であれば一旦宣誓したことは命をかけて守らなければと思うが、中国は米国の招きでWTOに加盟した時の約束を反故にし、更には言を翻して南シナ海を軍事基地化している。米国が問題にしているのは西側諸国の仲間に入れてもらった時の約束を中国が誠実に履行しないでかえって米国を凌駕し世界の覇権を獲り世界を中国式の統治システム(冊封体制)に組み込もうとしている事なのであって、F社の問題はその一部に過ぎないのだ。今後類似の問題がF社以外にも発生するだろう。

中山氏は「ファーウェイのサプライチェーン(供給網)を分断するだけでは米国や同盟国の産業にも打撃が及び、インターネットそのものの分断につながる懸念もある。正義を互いに振りかざすより、サイバー空間の安全性を確保する技術を米中で模索するのが賢明だと」いうが、米国は中国との供給網が途切れてもその代わりは容易に作れるので問題は無い。日本も同じだ。ベトナムや中南米など代りはいくらでもある。インターネットに至っては、中国が構築したインターネット網は世界から既に孤立している。だから、F社のシステムにバックドアがあるかどうかを話し合おうと呼びかけても意味が無い。無駄なコメントはしないほうが良い。

日本の通信システムや端末産業の凋落と惨状は知っての通りだ。この状況を千歳一隅のチャンスととらえ、日本にNOKIAや華為に代わる5Gを含む産業を育てようと、日経は経団連や国会議員や霞が関はどうして考えないのだろうか?不思議でならない。

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過剰債務の破局 どう防ぐ

「過剰債務の破局 どう防ぐ」というコラムを英Financial Timesのチーフ・エコノミクス・コメンテーター マーティン・ウルフ氏が2019年5月24日の日経新聞に載せている。これは同紙5月10日付のコラム「世界が低インフレの訳」の後編だ。

コラム子は世界がインフレになる可能性とデフレになる可能性についていくつかのシナリオを提示し、どちらも「正しい選択をしなかったがゆえに招いてしまう悲劇」であって不可避ではなく、その施策を提示している。

それには「財政政策と金融政策を組み合わせてインフレなき成長を創出する」のであって、①「債務比率の高い経済を健全化させる方向にインセンティブを修正」し、②「今の借金頼みの資産バブルへの依存を減らすべく、個人消費を高められるような政策に転換」し、③「金融機関の抱える債務を家計のバランスシートに移転させ」れば良いと言う。

そのせいで「実質金利が上昇しても、生産性は伸びているだろうから、」「債務負担におよぼす影響は、まず間違いなく金利上昇の影響を打ち消しておつりが来るはずだ。」と提案した施策によるマイナスの影響を考慮している。

これが日本経済にそのまま適用できるのだろうか?

日本経済の「長期停滞」は日本以外の大国や小国が成長している中での停滞であって、コラム子に見えている世界とはいささか違う気がする。もっとも、政府債務の増大や低金利は日本では小渕政権時に始まり、この点では世界をリードして来た。

コラム子の③の提案は要するに「企業の借金を減らし家庭の借金を増やす」ということだから、これを知ったら日本の選挙民は怒るだろう。日本経済の問題点は国家が借金に塗れ、企業に現金が溢れ、家庭が貧乏になっていることにあるからだ。かっての不況で金融機関に貸し剥がしに苦しんだ企業は労働分配率を低め(給与を低くし)、ひたすら現金を貯め込み、新規事業投資に金をケチった。その為日本経済はGAFAの様な新規産業も生まれず、自動車産業にすがって生き延びることになった。つまり、IT時代にふさわしい形に産業構造を変態(メタモルフォーゼ)させることができないでいる。例えば中国は国家の強権をもってGAFAに対応する企業群を育てており、日本はそれを見て「すごいな」としかいうことができない。

日本のIT産業はメインフレーム時代の発想のままで化石化している。「情報こそ力だ」ということが経団連も政府も分かっていないのではないか?ネット産業も弱小企業のままで、トップの楽天といえどもGAFA並みには育っておらず米国や中国の後塵を拝している。

気になるのは楽天が5Gのネットインフラ事業を始めようとしていることだ。ネットインフラ事業はネットサービス事業とは全く性格が違い、1企業がこれら2種の事業をすると性格分裂に陥ってしまう。経営者の頭脳が異なる思考体系に耐えられないだろう。ネットインフラは事業モデルが比較的単純で収益を見通しやすいのが落とし穴だ。かってNiftyというネットサービス会社があって成功していたがハードメーカの富士通に買収されてすっかり精彩を失った。NIftyも同じ罠に落ちた。

Googleやアマゾンがネットサービスを提供していないのは、彼らはネットベースのビジネスモデルが見えているからだ。しかし、ハード寄りの発想しかできない日本のIT経営者に彼らと同程度の、高度で複雑な抽象概念を処理して将来のビジネスモデルの構想を構築できるだろうか?それができたとして日本の投資家はそれを理解して忍耐強く事業家を支援し続けられるだろうか?

だから日本の取るべき政策は①労働分配率を上げ、②福祉などの低賃金を上げて未就労の日本人に働く喜びを感じさせ、③意欲ある若いネット起業人に20年単位の投資をしてGAFAに相当する企業を育て、④政府のIT政策の責任者に40歳代の活きの良い者を充てることだ。

折しも米国は中国の世界覇権の意欲を挫こうとしている。この為世界経済は一時的な低迷を避けられないだろうが、その影響は軽微なものになるはずだ。何故なら、それは中国への投資を損切りし中国以外のどこかに新たにサプライチェーンを延ばすことだからだ。

筆者はかってこの状況は日本に漁夫の利をもたらすとブログで書いたことがある。例えば、華為や三星が抜けた穴を埋めるのはSONYや富士通だ。日本に不足しているのは、起業家精神とそれを支える健全な長期投資だ。

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過剰債務の破局 どう防ぐ

「過剰債務の破局 どう防ぐ」というコラムを英Financial Timesのチーフ・エコノミクス・コメンテーター マーティン・ウルフ氏が2019年5月24日の日経新聞に載せている。これは同紙5月10日付のコラム「世界が低インフレの訳」の後編だ。

コラム子は世界がインフレになる可能性とデフレになる可能性についていくつかのシナリオを提示し、どちらも「正しい選択をしなかったがゆえに招いてしまう悲劇」であって不可避ではなく、その施策を提示している。

それには「財政政策と金融政策を組み合わせてインフレなき成長を創出する」のであって、①「債務比率の高い経済を健全化させる方向にインセンティブを修正」し、②「今の借金頼みの資産バブルへの依存を減らすべく、個人消費を高められるような政策に転換」し、③「金融機関の抱える債務を家計のバランスシートに移転させ」れば良いと言う。

そのせいで「実質金利が上昇しても、生産性は伸びているだろうから、」「債務負担におよぼす影響は、まず間違いなく金利上昇の影響を打ち消しておつりが来るはずだ。」と提案した施策によるマイナスの影響を考慮している。

これが日本経済にそのまま適用できるのだろうか?

日本経済の「長期停滞」は日本以外の大国や小国が成長している中での停滞であって、コラム子に見えている世界とはいささか違う気がする。もっとも、政府債務の増大や低金利は日本では小渕政権時に始まり、この点では世界をリードして来た。

コラム子の③の提案は要するに「企業の借金を減らし家庭の借金を増やす」ということだから、これを知ったら日本の選挙民は怒るだろう。日本経済の問題点は国家が借金に塗れ、企業に現金が溢れ、家庭が貧乏になっていることにあるからだ。かっての不況で金融機関に貸し剥がしに苦しんだ企業は労働分配率を低め(給与を低くし)、ひたすら現金を貯め込み、新規事業投資に金をケチった。その為日本経済はGAFAの様な新規産業も生まれず、自動車産業にすがって生き延びることになった。つまり、IT時代にふさわしい形に産業構造を変態(メタモルフォーゼ)させることができないでいる。例えば中国は国家の強権をもってGAFAに対応する企業群を育てており、日本はそれを見て「すごいな」としかいうことができない。

日本のIT産業はメインフレーム時代の発想のままで化石化している。「情報こそ力だ」ということが経団連も政府も分かっていないのではないか?ネット産業も弱小企業のままで、トップの楽天といえどもGAFA並みには育っておらず米国や中国の後塵を拝している。

気になるのは楽天が5Gのネットインフラ事業を始めようとしていることだ。ネットインフラ事業はネットサービス事業とは全く性格が違い、1企業がこれら2種の事業をすると性格分裂に陥ってしまう。経営者の頭脳が異なる思考体系に耐えられないだろう。ネットインフラは事業モデルが比較的単純で収益を見通しやすいのが落とし穴だ。かってNiftyというネットサービス会社があって成功していたがハードメーカの富士通に買収されてすっかり精彩を失った。NIftyも同じ罠に落ちた。

Googleやアマゾンがネットサービスを提供していないのは、彼らはネットベースのビジネスモデルが見えているからだ。しかし、ハード寄りの発想しかできない日本のIT経営者に彼らと同程度の、高度で複雑な抽象概念を処理して将来のビジネスモデルの構想を構築できるだろうか?それができたとして日本の投資家はそれを理解して忍耐強く事業家を支援し続けられるだろうか?
だから日本の取るべき政策は①労働分配率を上げ、②福祉などの低賃金を上げて未就労の日本人に働く喜びを感じさせ、③意欲ある若いネット起業人に20年単位の投資をしてGAFAに相当する企業を育て、④政府のIT政策の責任者に40歳代の活きの良い者を充てることだ。

折しも米国は中国の世界覇権の意欲を挫こうとしている。この為世界経済は一時的な低迷を避けられないだろうが、その影響は軽微なものになるはずだ。何故なら、それは中国への投資を損切りし中国以外のどこかに新たにサプライチェーンを延ばすことだからだ。

筆者はかってこの状況は日本に漁夫の利をもたらすとブログで書いたことがある。例えば、華為や三星が抜けた穴を埋めるのはSONYや富士通だ。日本に不足しているのは、起業家精神とそれを支える健全な長期投資だ。

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日本は中国のエネルギー戦略に尽くすべきか?

「もう一つの米中覇権争い」というコラムを日経新聞編集委員の松尾博文氏が2019年5月4日のDeep Insight欄で書いておられる。氏は「米国と中国の摩擦」を「エネルギーの視点で見れば、世界最大の生産国である米国と、世界最大の消費国である中国の攻防と捉えることができる。」と問題提起し、米中の狭間にいる日本はどうすべきかを提案している。筆者はそれに強烈な違和感を感じる。何故かを説明しよう。

松尾氏は以下の様に述べる。

エネルギーの重要性について松尾氏は「エネルギーの確保と国際政治は表裏一体だ。20世紀の2度の世界大戦を経て、石油の確保は国家安全保障の要となり、石油をめぐる地政学が国際政治の重要な関心事になってきた。」と説明している。エネルギーを制する者が世界の覇権を制するのであり、「『エネルギー支配』に動く米国に対し、エネルギーの次世代技術を押さえて米国の支配に挑戦する中国」、と松尾氏はエネルギーを巡って米国と世界が競合している構図を提示している。

この対立の構図に決定的な影響を与えたのが米国のシェール革命で、これにより米国は「ロシアやサウジアラビアを抜いて世界最大の産油国に躍り出」、「米国のエネルギー政策は不足への対応から、余剰への対応に軸足が移った」。
一方中国は「世界最大の1次エネルギー消費国となり、その差は年々開いて」おり、「米国主導の石油・ガス支配の傘に中国を入れたい米国と、入りたくない中国の思惑は反発する」状態になっている。この状態を打破しなければ中国は「一帯一路」という「新興国市場を開拓」し「沿線に勢力圏を広げ」るという「安全保障上の目標」を実現できない。

米中エネルギー生産/消費量


そこで中国はEVや風力発電等の次世代技術に注力し、その「サプライチェーン全体を押さえにかか」っており、実績をあげつつある。事実「17年の太陽光発電パネル出荷の世界上位10社中、9社が中国メーカー」であり「同年に販売されたEVの5割は中国向けだった。」中国政府は国家資本主義による「層の厚い企業群」を「強力な導入支援策」で「後押し」し、「次世代技術で主導権を握」ろうとする。これに成功すれば中国は「世界の4分の1近いエネルギーを消費する中国が仕掛けるエネルギー転換は世界の流れを決め、将来のエネルギー秩序を支配する力を持ち」、米国を凌駕できる。

松尾氏はこの様に中国がエネルギーの次世代技術で米国を圧倒するであろうことを述べ、「エネルギー覇権の行方を決める」のが「資源の多寡でなく、技術の優位性で決まる時代。米中攻防のはざまで日本はどう動くべきか。」と読者に問いを投げかけている。彼はその解答として「重要なのは中国主導のエネルギー秩序にあらがったり、なすすべなくのみ込まれたりするのではなく、欠かせない存在として加わること」を示し、更に日本の政界にも「エネルギー戦略も軸足を移す必要がある。」と注文している。

違和感は、松尾氏は日本を米国と中国という強大国の狭間で翻弄される弱小国だと見ていることだ。どんな議論にも前提条件や仮定がある。松尾氏は、中国が昇り龍であることは間違いなく、弱小日本は米国を忘れて中国に踏み潰されない様にしなければならない、と言っている。この前提条件は正しいのか?中国の経済統計は出鱈目だあることは経済学者でなくとも知っている。ソ連が崩壊した後そのGDPは20倍の水増しだったことが分かっている。だから中国のGDPは実質発表値の20分の1で、そうすると日本はGDP世界第2位であり続けていることになる。GDP2位の国に、GDP3位の国に踏み潰されないように貢献しろと言うのは笑止である。

更に、松尾氏の根拠として挙げている中国の太陽光発電パネルの製造だが、中国の製造量は多いがその技術はほとんど外国のをパクったものだ。中国産業定番の低品質製品の超大量製造でこの産業は壊滅しかけている。EVについても同様だ。中国は技術の消費国ではあっても開発・供給国ではない。それに、中国がエネルギーや食糧を外国に依存する様にしたのは米国の戦略だ。中国は米国の掌の上で踊っているにすぎない。

松尾氏の主張に従えば、日本は中国に「国内向け限定ですよ」と新幹線の技術を提供して競合相手を育てた日本の鉄道運送産業の二の舞を演じることになりそうだ。最初から約束を守る気が無く技術を盗んでやろうと構えている相手とどうやったら国益に適う関係を築けるか教えて欲しいものだ。

折しも米中貿易戦争が一段と過熱し、中国に入れ込んだ韓国経済が壊滅的打撃を受けている。韓国を見れば中国投資がどんなに危険か子供でも判る。華為も世界から孤立しつつある。米国は自由貿易世界を構成した自由、平等などの価値を守る為に、米国が構築した世界貿易の仕組みにただ乗りして世界の覇権を獲ろうとする国を許さないのだ。日本の繁栄がこの仕組みに乗ったものである以上、日本の取るべき進路は明らかだろう。日経新聞子がこれを理解しないはずがない。

日経新聞は中国の提灯持ちをいい加減止めて、どうしたら日本のエネルギー自給率を上げたり安定供給を図るかの政策を提言すべきだ。書くことはいくらでもある。

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「中国の一帯一路 多国間の協力で」とはどういうことだ?

日経新聞2019年5月18日の「Asiaを読む」欄にルーマニア・アジア太平洋研究所副所長のアンドリーア・ブリンザが「中国の一帯一路 多国間の協力で」という題で中国が一帯一路をAIIBの様な多国間の仕組みに変える案を紹介している。彼女は中国の「一帯一路」が世界の非難の的になったのは、それが中国と他国による2国間のやり取りだからであり、それを改善するには「一帯一路を多国間の形態」にすれば良いと言う。そしてそれに関する問題点をいくつか挙げ論じた後、「中国側は『一帯一路は、中国が世界に提供できる最も重要な公共財』と訴えてきた。本当かどうか証明するため、中国は一帯一路を開放し、国際社会が将来をかたちづくるのを認めるべきだ。」という文でコラムを閉じている。

これに対して日経新聞編集委員の飯野克彦氏はこの提案を支持し、中国がこの提案を採用する可能性について事例を挙げ、それが中国にとっても得になることだと述べている。

なんか怪しい、というのがこの記事を読んだ筆者の感想だ。最初の疑問は、中国の一帯一路が世界中からバッシングされ米中貿易戦争が激しさを増している現状で、なぜ小国ルーマニアの有名でもない研究所の研究者がこの提案をしたか?ということであり、次の疑問は、なぜ日経新聞がこんな無名の研究者の大して大きくもない話題を記事に載せ宣伝したか?だ。

中国は一帯一路が世界から貧乏国を債務の罠に陥れてその国を自分の思うように動かそうとしていると世界から非難されているのでその払拭に賢明になっている。だから、AIIBのビジネスモデルを一帯一路にも採用してそれを多国間の枠組みに変質させようという提案には乗るかも知れない。あるいは中国が世界からの批判をかわす為にあえてこの提案の観測気球を何らかの形で誰かに上げさせて様子を見ようと考えたのかも知れない。そこで、世界のルーマニアのマイナーな研究者に論文を書かせ、それを日経新聞の掲載させた、というシナリオが浮かび上がる。ちなみに、中国は一帯一路でEUを分断しようとしていて、ルーマニアを含む中・東欧16か国は一帯一路構想の覚書に調印している。ルーマニアは中国が約束した原子力発電所がまだ出来ていないと文句を言っているから、ちょっと中国寄りの発言をして中国の気を引きたいところかも知れない。要するに、参加国は、AIIBと同じで中国の大盤振る舞いを期待し、なお且つ自国の権益は守りたいのだ。

EUに加盟する28国  出典;https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/page22_000083.html
EUに加盟する28国  出典;https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/page22_000083.html

日経新聞は中国への投資をこれまで散々煽って来た実績がある。だから、中国が一帯一路に対する非難の嵐を逸らそうとする動きに協力するのもたやすいことだろう。だが、日経新聞の編集委員が現時点でこの提案を推すのは安易に過ぎないか?何故なら、中国が手本にしようとしているAIIBは確かに多国間の組織だが中国にしか利益にならず、日米共に参加しておらず、成功していないからだ。それに一帯一路の発想の源は唐、明時代の中国の覇権を取り戻そうとするものだから、たとえ一帯一路が多国間の枠組みを運営されようともそれは中国の利益だけの為になるだろうことは明々白々だからだ。更に、中国が一帯一路で他国に与える援助の原資は対米貿易の黒字でありそれが急速に減少しているので中国は従来の様に気前のいい旦那ではいられなくなってきている。

飯野氏は「関わっている中国の部門・機関が多いので、容易な課題ではない。共産党政権の意思統一がまず必要になる。」と訳の分からないことを言っている。共産主義政権の第一の特徴は党の一極支配で核心である習が提案していないものを誰が提案しているのだろうか?それは中国共産党の一部なのだろうか?それともトランプなのだろうか?

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「重すぎる日本のIoT」?ってそこじゃないだろ!

日経新聞2019年4月23日の「Deep Insight」欄にコメンテーターの中山淳史氏が「重すぎる日本のIoT」という題で日本は中国のIoTの実験に後れを取ってはいけないと警鐘を鳴らしている。だが、同じページの下段には「欧米の大衆政策、今は団結モード」という題の英エコノミストの記事の載っていて、中国の投資に警鐘を鳴らしている。どちらの記事の方向に日本政府と企業は進むべきだろうか?

中山氏は先ず「米中摩擦の影響でヒト・モノ・カネの動きが緩慢になり、技術革新に冬の時代が訪れる」懸念を紹介して問題点を提示し、次に「米シリコンバレーと関係が深い中国南部の深圳を歩いた。率直に言えば、『冬の兆し』はあまり感じられなかった。」と中国にとって好意的な結論を述べている。だが、これむはとても中国寄りだ。

即ち「日本はインフラや工場の自動化など」の「『重いIoT』に関心が向きがちだが、身近な技術革新がより多く待ち構えるのは軽いIoTかもしれない。まずは日本企業も中国の産業基盤を試したり、創業の現場に立ち合ったりしてみる価値はある。手をこまぬいているとむしろ、機会損失がとても大きくなる可能性がある。」と、中国発のバスに乗り遅れないように煽ってコラムを閉じている。そしてその理由として「深圳、香港、マカオを合わせた「粤港澳大湾区(グレーターベイエリア)」で巨大な再開発計画が始まり、そこには米サンフランシスコ湾や日本の首都圏に匹敵する経済圏が生まれる予定であり、スタンフォード大、ジョージア工科大など米欧、香港の大学と中国の大学・企業が連携する計画が目白押し」であることを述べている。

中国は単純な加工組立て産業を脱してハイテク産業育成に注力しており、その為に日本を含む西側先進諸国からの投資と技術が欲しいのだ。中国には外貨が不足していることもある。共産党主導の国家資本主義では西側資本主義国ができないハイテクサービスが自由に大々的に試せるので欧米産業界は投資しようとしており、日本企業はこのバスに乗り遅れると損しますよ、というのが中山氏の主張だ。

だが、中山氏は過去に日本企業がどれ程中国に投資しどれ程の利潤を日本に持ち帰れたかご存知だろうか?ゼロだ。なぜなら中国とは資本取引ができないからだ。また、何人の日本人企業人が中国国内で足止めをくらって帰れなくなったかをご存知だろうか?欧米企業はこれらのリスクを考えて中国の甘い罠に対し警戒モードだというThe Economistの記事が日経新聞の同じページの下段に掲載してあるのは皮肉だ。

Economist子は、数年前まで北京の外交官の間では「自国が中国といかに仲がいいかという自慢話を発言の間に滑り込ませていたものだ。中国は扱いにくいとぼやいてみせる」傾向が「影を潜めるように」なり、中国に好意的な「16プラス1」の国々は「中国から期待したほどの商機や投資を実現できないこの枠組みに次第にうんざりし、不満を高めて」おり、中国が「参加国を借金漬けにし、環境を破壊し、アフリカやアジア、アジア太平洋の多くに中国の基準を導入することで他国の参入をできなくしてしまう」ことを懸念し、「中国当局は新疆の再教育キャンプに数十万人に上るイスラム教徒の少数民族ウイグル族を収容し、さらに数百万人を厳しい監視下に置いているとして非難を浴びている。」と述べている。この為西側諸国は天安門事件の後“ゆるく”団結したように今は反中国で団結モードだ、というのだ。

これを読むと西側先進諸国が「粤港澳大湾区(グレーターベイエリア)」に投資しようという雰囲気だとはとても思えない。中山氏は中国お薦め記事を書くならリスク要因にも留意して書いて欲しいと思う。

中国の西側社会に対するメッセージは「
(1)中国の台頭は避けられない 
(2)中国に協力する国は多大な恩恵を受けられる 
(3)従って抵抗しても無駄だ、」
という力で押さえつけるものだ。この強権的姿勢が中国に対する警戒感を持たせることになっただろう。そうした中国の対外活動の原資が米中貿易からの巨大な黒字だったが、これは米中貿易摩擦で急激に減少しつつある。

米国の圧力に不満な日本の指導者たちは中国に肩入れし中国への投資を扇動する者も多いが、だからといって親中国路線が反米国以上のものを日本にもたらすのだろうか。それは一帯一路を受け入れた国々の現状を見れば明らかだ。彼らは日本をチベットやウイグルや旧満州国の様にしたいのだろうか?

米国と中国は世界の覇権を巡って対立しているが、この対立はそれ以上に自由や平等などの価値観の争いだ。経済活動はそれを支える思想が背後にあってこそ成り立つ。

日本はどっちにも良い顔を見せようとしている。且つて天安門事件後、西側先進諸国は団結して中国を経済封鎖したが、その団結を崩すきっかけを作ったのは日本の天皇の訪中だった。日本は中国を救ったのだが、その結果中国は日本の領土を侵害しようとし、米国を凌いで世界の覇権を握り、中国の独裁政治、国家資本主義を世界に押し付けようとしている。日本は中国に利用されたのだ。日本はこの二の舞をしてはならない。

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05/14のツイートまとめ

SMA_kenhonda

l 「基督教団教会等」内の日本基督教団の東京、西東京、神奈川、東海、中部、京都、大阪教区の教会・伝道所のホームページ情報他を加えました。教会のリストはいくつかありますが、ホームページのURLを整備したリストはここだけでしょう。(2019/5/13)
05-14 12:26

本多記念教会の2019年5月12日 礼拝をアップしました。(2019/5/12)
05-14 12:26

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リーマンショックから10年経った。世界経済は次の危機に備えなければならない。

日経新聞2019年5月10日の「FINANCIAL TIMES」欄にマーティン・ウルフ氏が「世界が低インフレの訳」という題で世界経済の動向を評論している。

氏は英フィナンシャル・タイムズのコラムニストで、日経新聞はそのコラムを何度も掲載しており、筆者も彼のコラムをいくつも読んでいるから彼の立ち位置は理解している。彼はグローバリストであり、トランプが破壊しようとしている既存の世界経済システムの擁護者であり、中国に対して寛容だ。東欧からの英国移民の子孫としての彼の立場は英国の現在の立場をある程度代弁していて、米国に対して常にシニカルだ。

彼の主張はこのコラムの書き出しで分かる。彼は「現在と将来の世界経済を理解するためには、ここにどうやって至ったのかを知る必要がある。『ここ』とは、名目と実質金利が超低水準で、ポピュリズム(大衆迎合主義)が幅を利かせ、グローバル市場経済が敵視される今日の状況を指す。最も妥当な説明は、実質需要とグローバルな信用創造の拡大・縮小との相互作用が今日の事態を招いた、というものだろう。」と、コラムの最初の段落で既に結論を述べ、その為に発生するであろう危機に対処できなければならないと警告している。

氏が「2008年の金融危機」と呼ぶのはこの年に起きたリーマン・ショックのことだ。氏は、過去20年間はリーマンショック前の10年とその後の10年間に分けられると言う。前半は低金利のために不動産バブルと信用バブルが発生してそれが破裂した10年であり、後半は危機の解決策としてゼロに近い実質金利が定着し債務圧縮が進行し、低成長が続き、ポピュリズムが蔓延(まんえん)した10年間だと言う。

この後半の10年はグローバリストの使徒のオバマとそれを否定するトランプの時代だ。オバマの8年間はグローバリストが米国の製造業を中国に移植し、その結果米国内の失業者が増えた時代だった。2017年のダボス会議での習近平の「我こそは世界の自由貿易体制の守護神だ」という演説がそれを証明する。中国は膨大な強権的財政政策で世界をリーマン・ショックから救ったからだが、その結果債務が膨大に増加し、疑似資本主義システムが形骸化した。氏は先進国の政府と非金融部門の債務が減らない事やその他多くの要因のために需要が長期間低迷したために需要が高まらず、実質金利が下落しその結果世界が低インフレになり、その為に来るであろう次の危機に対処する準備をしなければ、と言う。

氏は次の危機を純粋に経済問題としてしか言っていないが、それは意図してのことなのだろうか?次の危機は中国発だ。中国の債務総額が“一京円”に達した一方で習近平は一帯一路政策を推進して世界に対して覇権を取る意図を明らかにしている。その為に中国が外国に貸し付ける膨大な資金の原資は米国との貿易で発生する利潤であり、軍事的に対抗する技術の源は西側先進諸国からほとんど盗んだものだ。米国議会は自分が育てたと思っていた中国の政治経済システムが鬼っ子になってしまったのを深く反省し、その大改造をしようとしている。その為には世界経済の成長を犠牲にすることも厭わない様だ。

氏は「新たな債務危機や政治の不安定から再び大混乱を引き起こす危険が迫っているのだろうか。そしてこれが一番重要だが、その危険に対処する最善の政策は何だろうか。」と言ってコラムを閉じている。氏の曖昧な表現を筆者なりに言い換えれば「米国は中国をreformしようとしており、世界経済はそのショックに対処しなければならない。その対策は第2の中国を世界のどこかにつくることだ。」ということになろう。

日本は中国5000年の夢から醒めなければならない。隋、唐の時代の中国は既に無く、高々建国70年の開発途上国であり、独裁共産主義国であり、隣国を軍事侵攻して領土を拡大して来た国であり、日本もその例外ではない、ということだ。

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