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KenConsultingの本多謙が政治/経済記事を独自の視点で評論します

リーマンショックから10年経った。世界経済は次の危機に備えなければならない。

日経新聞2019年5月10日の「FINANCIAL TIMES」欄にマーティン・ウルフ氏が「世界が低インフレの訳」という題で世界経済の動向を評論している。

氏は英フィナンシャル・タイムズのコラムニストで、日経新聞はそのコラムを何度も掲載しており、筆者も彼のコラムをいくつも読んでいるから彼の立ち位置は理解している。彼はグローバリストであり、トランプが破壊しようとしている既存の世界経済システムの擁護者であり、中国に対して寛容だ。東欧からの英国移民の子孫としての彼の立場は英国の現在の立場をある程度代弁していて、米国に対して常にシニカルだ。

彼の主張はこのコラムの書き出しで分かる。彼は「現在と将来の世界経済を理解するためには、ここにどうやって至ったのかを知る必要がある。『ここ』とは、名目と実質金利が超低水準で、ポピュリズム(大衆迎合主義)が幅を利かせ、グローバル市場経済が敵視される今日の状況を指す。最も妥当な説明は、実質需要とグローバルな信用創造の拡大・縮小との相互作用が今日の事態を招いた、というものだろう。」と、コラムの最初の段落で既に結論を述べ、その為に発生するであろう危機に対処できなければならないと警告している。

氏が「2008年の金融危機」と呼ぶのはこの年に起きたリーマン・ショックのことだ。氏は、過去20年間はリーマンショック前の10年とその後の10年間に分けられると言う。前半は低金利のために不動産バブルと信用バブルが発生してそれが破裂した10年であり、後半は危機の解決策としてゼロに近い実質金利が定着し債務圧縮が進行し、低成長が続き、ポピュリズムが蔓延(まんえん)した10年間だと言う。

この後半の10年はグローバリストの使徒のオバマとそれを否定するトランプの時代だ。オバマの8年間はグローバリストが米国の製造業を中国に移植し、その結果米国内の失業者が増えた時代だった。2017年のダボス会議での習近平の「我こそは世界の自由貿易体制の守護神だ」という演説がそれを証明する。中国は膨大な強権的財政政策で世界をリーマン・ショックから救ったからだが、その結果債務が膨大に増加し、疑似資本主義システムが形骸化した。氏は先進国の政府と非金融部門の債務が減らない事やその他多くの要因のために需要が長期間低迷したために需要が高まらず、実質金利が下落しその結果世界が低インフレになり、その為に来るであろう次の危機に対処する準備をしなければ、と言う。

氏は次の危機を純粋に経済問題としてしか言っていないが、それは意図してのことなのだろうか?次の危機は中国発だ。中国の債務総額が“一京円”に達した一方で習近平は一帯一路政策を推進して世界に対して覇権を取る意図を明らかにしている。その為に中国が外国に貸し付ける膨大な資金の原資は米国との貿易で発生する利潤であり、軍事的に対抗する技術の源は西側先進諸国からほとんど盗んだものだ。米国議会は自分が育てたと思っていた中国の政治経済システムが鬼っ子になってしまったのを深く反省し、その大改造をしようとしている。その為には世界経済の成長を犠牲にすることも厭わない様だ。

氏は「新たな債務危機や政治の不安定から再び大混乱を引き起こす危険が迫っているのだろうか。そしてこれが一番重要だが、その危険に対処する最善の政策は何だろうか。」と言ってコラムを閉じている。氏の曖昧な表現を筆者なりに言い換えれば「米国は中国をreformしようとしており、世界経済はそのショックに対処しなければならない。その対策は第2の中国を世界のどこかにつくることだ。」ということになろう。

日本は中国5000年の夢から醒めなければならない。隋、唐の時代の中国は既に無く、高々建国70年の開発途上国であり、独裁共産主義国であり、隣国を軍事侵攻して領土を拡大して来た国であり、日本もその例外ではない、ということだ。

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中国の無責任を許すG7

日本は中国を反面教師として独自の世界戦略を

日本経済新聞2018年6月22日朝刊のコラムにコメンテーターの上村率直氏が「中国の無責任許すG7」というコラムが掲載されていている。上村氏は「アジア諸国が中国からの資金の援助に頼って港湾や鉄道などの社会インフラを整える計画を次々の軌道修正している。」「高利の借金を膨らませて返済に行き詰まったあげく、肝心の社会インフラそのものが中国の国有企業へと実質的に売り渡される。」状況に警鐘を鳴らし、「新シルクロード経済圏構想『一帯一路』の掛け声でアジアやアフリカのインフラ事業に関わり、巨大な債権国になりつつある中国。取り組みの総額は一兆ドル規模ともいわれている。危なっかしさを感じさせるのは、外国へ流す資金の全容を中国自身がきちんと把握し切れていないようにみえることだ。」とその警鐘を具体的に説明している。これへの国際社会の対処は「日米欧や新興債権国が集まって、貸し先の国々の情報を交換したり問題国の債務再編を相談したりする『パリクラブ(主要債権国会合)』が中国の不透明さをただす場になってもよさそうだが」中国はその「正規メンバーの義務を免れている」と中国の危険性を指摘している。上村氏は、この対策を具体的に相談するのがG7だが、「G7の首脳たちが通商政策で対立」している為に中国への外圧対策をまとめ切れず、「債権大国になった中国の無責任ぶりを許している」と嘆いている。
この問題の背景と日本のあるべき独自の対応を筆者なりに考えてみたい。背景として以下が挙げられる。

第一に、日欧のインテリは中国をまとまりのある近代国家だと思っているがそれは間違いだ。歴史的に見て、中国がパリ革命で定義された近代国家だったことは現在に至るまで無い。中国の本質は収奪を主とする馬賊の集合体であり、今の日本の様に全体として統一された運営はできていない。例えば朝鮮人の多い瀋陽軍区は北朝鮮を支援しており、それに対して習近平は影響力を行使できていない。彼は瀋陽軍区に入る時は戦車に乗って暗殺されないよう細心の用心をする程だ。最大の馬賊集団である中国共産党の首領でもこの様(ざま)だ。

第2に、中国の役人は上役に高く評価され上位の役職を得る為に何でもありの行動を取る。自分の評価が上がるなら庶民が死のうが生きようが顧慮しない。市場原理など頭の片隅にも無い。毛沢東の大躍進政策の時地方の役人は庶民の農具や鍋を供出させて屑鉄を作った例があるし、外国から製鉄技術を導入した後鉄鋼を作り過ぎて巨大な在庫の山を築いた。鉄鋼の生産量が自分の評価指数だったからだ。海外へのインフラ建設も同様だ。契約を纏めればそれが評価になるから、後の事は考えないで賄賂と謀略で兎に角契約を纏める。商業道徳など頭の片隅にも無い。顧客が融資の返済に困る様にして港湾などを自国のものにする。

第3に、中国には外貨が枯渇している。米国のグローバリストは中国を自分に都合の良い下請け加工業者国家にした。その為に元とドルの交換比率を保証した。中国の主要産業は低マージンの組み立て産業なのだが、人件費が高騰して中国で製造するメリットが無くなり、工場は東南アジアに逃げ、外資を稼ぐ手段が無くなった。更に、欧米が投資したドルは高級官僚の個人資産になってしまった。これには中国特有のマジックが効いた。資本主義国では貨幣は経済原則に則りその総供給量は厳格に管理されるが、中国の様な共産主義国家は貨幣を自分の好きなだけ発行できる。例えば、国家が10兆元のプロジェクトを実行すれば、国家は10兆元の貨幣を発行してプロジェクトを請け負った高級官僚に渡す。彼は自分の一族を使ってそのプロジェクトを出来るだけ安く仕上げ、その総費用が7兆元だったとすると残りの3兆元は彼のものになる。彼はそれを自分の私有財産として欧米の銀行にドルで預金する。この時の元・ドルの交換比率は米国が保証している。この種のプロジェクトは国内で無人の新都市を建築するだけでなく、先進国の先端技術企業を買収したり、外国のインフラを建設したり、外国の高官を買収するのにも使われたが、その多くは焦げ付いた。こうして中国国内のドルはすっかり枯渇してしまった。海外政府とのプロジェクトどころではなくなった。

第4に、欧州諸国も第二次世界大戦後に米国主導で構築した世界経済&防衛体制の恩恵を受けた、ということだ。EUは米国から主導権を取り戻す意図があったが、その盟主のドイツも中国の無責任な投資の影響を被っている。例えば、ドイツ銀行の筆頭株主は中国の資産家になった。おまけにドイツは中国に投資し過ぎ、それを回収できなくなっている。トランプは米国に替わって世界の覇権を取ろうとする中国の意図を挫いて中国に対する米国の覇権を取り戻そうとしている。その為に中国への経済制裁の為にドイツの中国に対する債権に傷がつくこともあるだろう。この方針の対立がG7でのトランプとメルケルの不調和の原因とみるべきだろう。

さて、第二次世界大戦後米国のグローバリストが用意した世界経済の枠組みの中で欧州各国や中国や日本は経済発展している間に米国は疲弊してしまった。中国は米国に替わって世界の覇権を握ろうとしている。トランプは米国のグローバリストの失敗にナショナリズムで対抗しようとしている。世界は第2次世界大戦前の様にブロック経済になるかも知れない。この様な環境で日本は自国を中心とするブロック経済圏を構築し、ブロック内で完結する経済圏を目指すべきだろう。日本は海外に流出した核となる企業を自国に還流させ、ブロック内各国の経済構造を日本無しでは成立しないようにすべきだ。TPPはこの意味で日本と友好国にとって肝要な仕組みとなるだろうし、その運営にあたっては中国が反面教師となるだろう。

(資料; https://www.nikkei.com/article/DGKKZO32069070R20C18A6TCR000/ ) 

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